すれ違いざま、縁側に座っていた晴明がぼそりと呟いた。
「嫁にやる日までは手を出すことは禁ずる。精一杯妥協して、接吻のみ許す」
「…」
口づけ以上のことをつい想像してしまった主さまの頬が赤くなり、人攫いに遭ったかのように息吹が晴明に向かって手を伸ばしたが、主さまは構わず空を駆け上がり、息吹の手を自身の背中に回させた。
「しっかり掴まっていないと落ちるぞ」
「落ちないも…きゃっ!主さまの馬鹿っ、離さないで!」
意地を張るので途中手を離そうとすると、泣き声で首にしがみついて来た。
互いに顔をかっかと赤くさせながら黙り込み、息吹が喜ぶようなことをひとつしか思い浮かぶことができなかった主さまは、息吹を抱え直しながら…耳元で囁いた。
「誕生日が欲しいと言ったな」
「え…?うん、だっていつ生まれたのかわかんないし…それがどうしたの?」
「…着いたぞ」
幽玄町からはそんなに離れてはいないが、随分山奥だ。
人が分け入らないような山々が重なり合う上空を飛んでいると…突然一際輝く光景が目に飛び込んできて、息吹は思わず瞳を細めた。
「眩しい…!え……あれって…」
「夏にしか咲いていない。偶然見つけて、俺だけしか知らない場所だ」
――目に飛び込んできたのは、太陽に向かって大輪を咲かせている山吹色の花の群生。
規模は小さいが、十分花畑と呼べるほどの大きさで、花の大好きな息吹は花畑の中心に降り立つと、歓声を上げた。
「すっごい!主さまっ、これはなんていう花なのっ?」
「日輪草と言うそうだ。ああ眩しい…」
山姫のようなことを言って、草を綺麗にならした場所で腰を下ろすと、息吹がとても嬉しそうにしていたので、連れてきて正解だと思った。
「今日はお前の誕生日だ。めんどくさいから俺と同じ日でいいな?」
「…え?私の誕生日…?誕生日を作ってくれるのっ?」
「生まれ月は俺と同じはずだから、日はいつでもいいだろう?息吹、俺の膝に来い」
ぴたりと脚が止まった。
笑顔は引っ込み、地にしっかり脚をつけると唇を尖らせ、猛反発。
「や、やだっ。どうして?」
さあ、言うんだ。
「嫁にやる日までは手を出すことは禁ずる。精一杯妥協して、接吻のみ許す」
「…」
口づけ以上のことをつい想像してしまった主さまの頬が赤くなり、人攫いに遭ったかのように息吹が晴明に向かって手を伸ばしたが、主さまは構わず空を駆け上がり、息吹の手を自身の背中に回させた。
「しっかり掴まっていないと落ちるぞ」
「落ちないも…きゃっ!主さまの馬鹿っ、離さないで!」
意地を張るので途中手を離そうとすると、泣き声で首にしがみついて来た。
互いに顔をかっかと赤くさせながら黙り込み、息吹が喜ぶようなことをひとつしか思い浮かぶことができなかった主さまは、息吹を抱え直しながら…耳元で囁いた。
「誕生日が欲しいと言ったな」
「え…?うん、だっていつ生まれたのかわかんないし…それがどうしたの?」
「…着いたぞ」
幽玄町からはそんなに離れてはいないが、随分山奥だ。
人が分け入らないような山々が重なり合う上空を飛んでいると…突然一際輝く光景が目に飛び込んできて、息吹は思わず瞳を細めた。
「眩しい…!え……あれって…」
「夏にしか咲いていない。偶然見つけて、俺だけしか知らない場所だ」
――目に飛び込んできたのは、太陽に向かって大輪を咲かせている山吹色の花の群生。
規模は小さいが、十分花畑と呼べるほどの大きさで、花の大好きな息吹は花畑の中心に降り立つと、歓声を上げた。
「すっごい!主さまっ、これはなんていう花なのっ?」
「日輪草と言うそうだ。ああ眩しい…」
山姫のようなことを言って、草を綺麗にならした場所で腰を下ろすと、息吹がとても嬉しそうにしていたので、連れてきて正解だと思った。
「今日はお前の誕生日だ。めんどくさいから俺と同じ日でいいな?」
「…え?私の誕生日…?誕生日を作ってくれるのっ?」
「生まれ月は俺と同じはずだから、日はいつでもいいだろう?息吹、俺の膝に来い」
ぴたりと脚が止まった。
笑顔は引っ込み、地にしっかり脚をつけると唇を尖らせ、猛反発。
「や、やだっ。どうして?」
さあ、言うんだ。

