「あら…どうなさったんですか?」
また銀がふらふらとどこかへ消えたので、悩みの種を植え付けられてしまった主さまはむすっとなったまま縁側で煙管を吹かしていた。
「…銀が来た」
「ああ、あの悪戯狐ですね。銀は主さまをいつもからかっていましたよね、懐かしい」
「懐かしがるな。それより息吹の誕生日の件、どうなっている?」
「それは主さまが息吹が何を欲しがっているのか聞き出さないと話が進まないと言ったでしょう?で、聴けたんですか?」
「…まだだ」
「相変わらず不器用なんですねえ。かっかっしてるみたいだから私が冷やしてあげましょうか?」
ふう、と息を吐きかけると、真っ白な息が主さまの頬にかかり、肩を押して離れさせると煙管で頭を軽く叩いた。
「やめろ」
「ふふふ、今日中に聞き出して下さいね、でないと準備する時間がなくなりますから」
「わかっている」
…わかってはいるのだが、どうやって聞き出せばいいのかわからない。
誕生日の無い息吹――
息吹がそれを気にしていたことを知ったのもつい最近のこと。
「あら、じゃあ失礼しますね」
急に雪女が腰を上げて部屋の奥へと行くと、代わりに息吹が自室からのそりと這い出てきた。
「あれ…主さまが起きてる…」
「…ちょっとこっちに来い」
乱れた髪を櫛で梳きながら隣に座った息吹の横顔をちらりと盗み見すると、けだるそうな表情が色っぽく、声が上ずりそうになって大きな咳払いをした。
「…お前に聴きたいことがある」
「うん、なあに?」
遠回りに聞き出す言葉が見つからず、意を決した主さまは息吹に向き直り、まっすぐ見つめると、息吹がたじろいだ。
「主さま…?」
「何か欲しいものはないか?俺が手に入れてきてやる」
…いきなりのことで、息吹がきょとんとした。
主さまも自分が同じ立場だったらそうなるだろうと思いつつ、返事を待っていると、息吹は赤く染まってゆく空を見上げ、主さまはその横顔に見惚れた。
「…好きな人と一緒になりたい」
胸がずきんと、痛んだ。
また銀がふらふらとどこかへ消えたので、悩みの種を植え付けられてしまった主さまはむすっとなったまま縁側で煙管を吹かしていた。
「…銀が来た」
「ああ、あの悪戯狐ですね。銀は主さまをいつもからかっていましたよね、懐かしい」
「懐かしがるな。それより息吹の誕生日の件、どうなっている?」
「それは主さまが息吹が何を欲しがっているのか聞き出さないと話が進まないと言ったでしょう?で、聴けたんですか?」
「…まだだ」
「相変わらず不器用なんですねえ。かっかっしてるみたいだから私が冷やしてあげましょうか?」
ふう、と息を吐きかけると、真っ白な息が主さまの頬にかかり、肩を押して離れさせると煙管で頭を軽く叩いた。
「やめろ」
「ふふふ、今日中に聞き出して下さいね、でないと準備する時間がなくなりますから」
「わかっている」
…わかってはいるのだが、どうやって聞き出せばいいのかわからない。
誕生日の無い息吹――
息吹がそれを気にしていたことを知ったのもつい最近のこと。
「あら、じゃあ失礼しますね」
急に雪女が腰を上げて部屋の奥へと行くと、代わりに息吹が自室からのそりと這い出てきた。
「あれ…主さまが起きてる…」
「…ちょっとこっちに来い」
乱れた髪を櫛で梳きながら隣に座った息吹の横顔をちらりと盗み見すると、けだるそうな表情が色っぽく、声が上ずりそうになって大きな咳払いをした。
「…お前に聴きたいことがある」
「うん、なあに?」
遠回りに聞き出す言葉が見つからず、意を決した主さまは息吹に向き直り、まっすぐ見つめると、息吹がたじろいだ。
「主さま…?」
「何か欲しいものはないか?俺が手に入れてきてやる」
…いきなりのことで、息吹がきょとんとした。
主さまも自分が同じ立場だったらそうなるだろうと思いつつ、返事を待っていると、息吹は赤く染まってゆく空を見上げ、主さまはその横顔に見惚れた。
「…好きな人と一緒になりたい」
胸がずきんと、痛んだ。

