だがまともに眠れるわけもなく…眠たいのに眠れないという状況に、主さまは腕の中の息吹を見つめながら密かにため息をついた。
「…おい」
呼びかけても返事はなく、すうすうと寝息が聴こえてまたちょっといらっとしながら、やわらかそうな首筋に視線が吸い寄せられて、唇を寄せると軽くなぞった。
「…噛みつくぞ」
「……やだ」
「!お、起きてたのか…」
寝たと思ってつい気が大きくなってついた冗談を真に受けた息吹が手で首を庇うと、主さまは寝返りを打って赤くなった顔を隠した。
「主さまは…女の人に噛みつきたいの?噛みついて…どうするの?」
「…食う。その前に、抱く」
正直に告白すると息吹が沈黙してしまい、肩越しにちらりと振り返ると…息吹は唇を尖らせて、真っ白な頬を桜色に染めていた。
「そ、そうなんだ…。じゃあ今私に“噛みつく”って言ったのは…」
「…言葉のあやだ。真に受けるな」
「どうせ私はがりがりで美味しくないもん。主さまの馬鹿」
――はたから見たらいちゃついているようにしか見えないのだが、意地の張り合いをしている2人はそれにまったく気付いておらず、息吹を押して離れさせると続き部屋の息吹の自室を指した。
「あっちへ行ってろ。俺は眠たいんだ」
「じゃあ主さまの香りのするお布団で私も寝る」
「…」
息吹が隣の部屋へ移動すると早速押入れを開ける音がした。
「なんなんだ、あいつ…」
そうこうしているうちに、息吹の部屋には何の規制もかかっておらず出入り自由なので、息吹に声をかける者が在った。
「息吹、唐の珍しい菓子を持って来てやったぞ、一緒に食おう」
「銀さん!わあ、どんなお菓子?」
息吹に興味津々の銀が馴れ馴れしく息吹の名を口にする度にいらいら度が増してゆく主さまは結局この日、満足に眠ることができなかった。
そういう主さまの心の機微に聡い晴明はこの時庭の手入れをしている山姫を眺めながら、にやり。
「面白くなってきた」
あっちもこっちも、面白いことだらけ。
「…おい」
呼びかけても返事はなく、すうすうと寝息が聴こえてまたちょっといらっとしながら、やわらかそうな首筋に視線が吸い寄せられて、唇を寄せると軽くなぞった。
「…噛みつくぞ」
「……やだ」
「!お、起きてたのか…」
寝たと思ってつい気が大きくなってついた冗談を真に受けた息吹が手で首を庇うと、主さまは寝返りを打って赤くなった顔を隠した。
「主さまは…女の人に噛みつきたいの?噛みついて…どうするの?」
「…食う。その前に、抱く」
正直に告白すると息吹が沈黙してしまい、肩越しにちらりと振り返ると…息吹は唇を尖らせて、真っ白な頬を桜色に染めていた。
「そ、そうなんだ…。じゃあ今私に“噛みつく”って言ったのは…」
「…言葉のあやだ。真に受けるな」
「どうせ私はがりがりで美味しくないもん。主さまの馬鹿」
――はたから見たらいちゃついているようにしか見えないのだが、意地の張り合いをしている2人はそれにまったく気付いておらず、息吹を押して離れさせると続き部屋の息吹の自室を指した。
「あっちへ行ってろ。俺は眠たいんだ」
「じゃあ主さまの香りのするお布団で私も寝る」
「…」
息吹が隣の部屋へ移動すると早速押入れを開ける音がした。
「なんなんだ、あいつ…」
そうこうしているうちに、息吹の部屋には何の規制もかかっておらず出入り自由なので、息吹に声をかける者が在った。
「息吹、唐の珍しい菓子を持って来てやったぞ、一緒に食おう」
「銀さん!わあ、どんなお菓子?」
息吹に興味津々の銀が馴れ馴れしく息吹の名を口にする度にいらいら度が増してゆく主さまは結局この日、満足に眠ることができなかった。
そういう主さまの心の機微に聡い晴明はこの時庭の手入れをしている山姫を眺めながら、にやり。
「面白くなってきた」
あっちもこっちも、面白いことだらけ。

