「絶対何か入り込んでいる。…ここは息吹の部屋じゃないか!」
――襖の外から喧騒が聴こえ、眠りの浅い主さまが頬杖をついて横の息吹に目を遣ると、まだすやすやと眠っていたので起こさずそのままにしておいた。
するといきなり襖が開き、主さまと道長が対面。
「!」
「お前が藤原道長だな」
何度も見たことがある。
だが道長は、後宮に乗り込んできた主さまを遠目からしか見たことがない。
けれど主さまから立ち上る雰囲気は間違いなく大物の妖で、手にしていた妖を斬れる太刀を持つ手に力をこめた。
「貴様…!息吹に何を!」
「…俺が何かしているように見えるか?」
「う、ん…主さまうるさい…」
息吹が着物の胸元をきゅっと握ってきたので道長も主さまも慌てて口を閉ざすと、遅れてやって来た晴明が、主さまと一緒に寝ている光景を見て眉を上げた。
早速嫌味を言われるのでは…と主さまが身構えると、主さまを睨みつける道長の肩を引いて入り口から退かせると、鶴の一声。
「起きなさい息吹。父様は腹が空いたなあ」
「…えっ?きゃっ、父様と道長様っ」
寝顔を見られて顔を赤くした息吹の頭に羽織を被せて主さまが起き上がり、わなわなと身体を震わせている道長と対峙した。
背丈は同じほどだが主さまの方が線が細く色白で儚い。
ひと太刀浴びせられてしまえばひとたまりもないほどに細いので慌てた息吹が起き上がると主さまの背中に抱き着いた。
「道長様っ、主さまは良い妖なんです!お願い、乱暴しないで!」
「い、息吹…だがそいつは…幽玄町の主では…」
「私を拾って育てて下さった方なんです!大切な方なの!お願い、主さまにひどいことしないで!」
――息吹に庇われて顔が赤くなった主さまが、身体に回っていた息吹の手を剥がしながら目の前の道長より引っ付く息吹を躍起になって引き離そうとしていた。
「は、離れろ!」
「やだー!」
「晴明が腹が減ったと言っていたぞ。俺はこいつを傷つけないと約束する。だから行け」
「……ほんと?…父様、見張っててね!」
「ああ、いいよ」
そして本音合戦、始まる。
――襖の外から喧騒が聴こえ、眠りの浅い主さまが頬杖をついて横の息吹に目を遣ると、まだすやすやと眠っていたので起こさずそのままにしておいた。
するといきなり襖が開き、主さまと道長が対面。
「!」
「お前が藤原道長だな」
何度も見たことがある。
だが道長は、後宮に乗り込んできた主さまを遠目からしか見たことがない。
けれど主さまから立ち上る雰囲気は間違いなく大物の妖で、手にしていた妖を斬れる太刀を持つ手に力をこめた。
「貴様…!息吹に何を!」
「…俺が何かしているように見えるか?」
「う、ん…主さまうるさい…」
息吹が着物の胸元をきゅっと握ってきたので道長も主さまも慌てて口を閉ざすと、遅れてやって来た晴明が、主さまと一緒に寝ている光景を見て眉を上げた。
早速嫌味を言われるのでは…と主さまが身構えると、主さまを睨みつける道長の肩を引いて入り口から退かせると、鶴の一声。
「起きなさい息吹。父様は腹が空いたなあ」
「…えっ?きゃっ、父様と道長様っ」
寝顔を見られて顔を赤くした息吹の頭に羽織を被せて主さまが起き上がり、わなわなと身体を震わせている道長と対峙した。
背丈は同じほどだが主さまの方が線が細く色白で儚い。
ひと太刀浴びせられてしまえばひとたまりもないほどに細いので慌てた息吹が起き上がると主さまの背中に抱き着いた。
「道長様っ、主さまは良い妖なんです!お願い、乱暴しないで!」
「い、息吹…だがそいつは…幽玄町の主では…」
「私を拾って育てて下さった方なんです!大切な方なの!お願い、主さまにひどいことしないで!」
――息吹に庇われて顔が赤くなった主さまが、身体に回っていた息吹の手を剥がしながら目の前の道長より引っ付く息吹を躍起になって引き離そうとしていた。
「は、離れろ!」
「やだー!」
「晴明が腹が減ったと言っていたぞ。俺はこいつを傷つけないと約束する。だから行け」
「……ほんと?…父様、見張っててね!」
「ああ、いいよ」
そして本音合戦、始まる。

