『源氏の物語』と書かれた巻物を手渡された息吹は、きょとんとした顔で道長を見上げた。
「道長様…これはなあに?」
「こ、これは宮中で女房が書いている物語だ。ものすごく流行っていてな、息吹にも読んでもらいたくて持ってきたのだ」
「物語っ?わあ、ありがとうございます!父様っ、見てっ」
「紫式部が今も続きを書いている。読み終わったら道長にお願いしなさい」
「はいっ」
――想像以上に息吹が喜んでくれたので、晴明に勧められてやったこととは言え道長の顔も綻び、腰を下ろしたのだが…
晴明の隣に座った息吹がそわそわしはじめたので、笑いを堪えながら膝の上に置いていた巻物を指した。
「今すぐ読みたいなら読んできてもいいぞ。俺は晴明とこれから一杯やるつもりだから後でまた…」
「いいんですか?す、すぐ読みますからっ。じゃあ父様、お部屋で読んで来ますね」
「ああ、行っておいで」
居ても経っても居られなくなった息吹が巻物を手にそそくさと居なくなると…晴明と道長が同時に噴き出した。
「あんなに喜んでくれるとは思っていなかったぞ」
「だから言っただろう?息吹は私に似て本の虫なのだ。3度の飯より本を愛している変わった娘なのだよ」
「…晴明…お、俺は…その…今日息吹に……いいか?」
「む?なんの話だ?息吹に何か話したいのなら私に許可を得ず話せばよいだろうが」
急に熱くなった道長は扇子がぱたぱたと顔を仰ぎながら口を開け閉めして晴明の膝を叩いた。
「つ、妻にしてもいいのか?」
「息吹が“はい”と言うならば仕方あるまい。その代わりもれなく私もついて来るからな、そなたとはもっと仲良くなれそうだ」
道長がげんなりした顔をすると、その反応を待っていた晴明は嬉しくなってしまい、式神の童女が運んできた酒を豪快に呷った。
「息吹に惚れている妖はどうする?」
「さて、激しい気性故そなたに危害を加えるやもしれぬぞ。言っておくが私は中立の立場なのだから加勢はできぬ」
「殺気を感じればこの刀で斬る。息吹が…俺の妻か…。ま、まあそなたがついて来てもいい!我慢する!」
晴明はまた噴き出した。
「道長様…これはなあに?」
「こ、これは宮中で女房が書いている物語だ。ものすごく流行っていてな、息吹にも読んでもらいたくて持ってきたのだ」
「物語っ?わあ、ありがとうございます!父様っ、見てっ」
「紫式部が今も続きを書いている。読み終わったら道長にお願いしなさい」
「はいっ」
――想像以上に息吹が喜んでくれたので、晴明に勧められてやったこととは言え道長の顔も綻び、腰を下ろしたのだが…
晴明の隣に座った息吹がそわそわしはじめたので、笑いを堪えながら膝の上に置いていた巻物を指した。
「今すぐ読みたいなら読んできてもいいぞ。俺は晴明とこれから一杯やるつもりだから後でまた…」
「いいんですか?す、すぐ読みますからっ。じゃあ父様、お部屋で読んで来ますね」
「ああ、行っておいで」
居ても経っても居られなくなった息吹が巻物を手にそそくさと居なくなると…晴明と道長が同時に噴き出した。
「あんなに喜んでくれるとは思っていなかったぞ」
「だから言っただろう?息吹は私に似て本の虫なのだ。3度の飯より本を愛している変わった娘なのだよ」
「…晴明…お、俺は…その…今日息吹に……いいか?」
「む?なんの話だ?息吹に何か話したいのなら私に許可を得ず話せばよいだろうが」
急に熱くなった道長は扇子がぱたぱたと顔を仰ぎながら口を開け閉めして晴明の膝を叩いた。
「つ、妻にしてもいいのか?」
「息吹が“はい”と言うならば仕方あるまい。その代わりもれなく私もついて来るからな、そなたとはもっと仲良くなれそうだ」
道長がげんなりした顔をすると、その反応を待っていた晴明は嬉しくなってしまい、式神の童女が運んできた酒を豪快に呷った。
「息吹に惚れている妖はどうする?」
「さて、激しい気性故そなたに危害を加えるやもしれぬぞ。言っておくが私は中立の立場なのだから加勢はできぬ」
「殺気を感じればこの刀で斬る。息吹が…俺の妻か…。ま、まあそなたがついて来てもいい!我慢する!」
晴明はまた噴き出した。

