屋敷に戻った主さまは自室に引きこもり、いらいらと部屋の中を歩き回った。
「道長…藤原道長…」
息吹にまとわりついていたあの男…
最初からいけ好かない奴だとは思っていたが…息吹を嫁に?
「許すものか。息吹は俺の…」
呟いた時、縁側の方から何か音がしたので襖を開けて外を見てみると、雪女が凛とした居住まいで正座し、しとしとと降り続ける雨を見ていた。
「雪女か…」
「あからさまにがっかりした声を出さないで下さい。息吹さんだと思いました?」
「…」
無言で傍らに座ると、息吹が庭をちょろちょろと動き回って花に水をやっている姿を思い浮かべながら茶を口にした。
「毎日ここまで来てくれるなんて嬉しいでしょう?主さまに会いに来ているのでは?」
「…当然だ。あれは俺の…」
自分のもの、と言いかけると、空から真っ白な鳥が飛んできて1度庭の上を旋回すると紙になり、主さまの手にふわふわと舞い落ちてきた。
「晴明からですね。なんて書いてあるんですか?」
まずは主さまがさっと目を走らせ…そしてみるみる表情が険しくなったので、雪女はそれ以上話しかけるのをやめて主さまを待った。
「…………今日息吹はここに来ない。…くそっ!」
手にしていた湯呑を庭に鎮座する大きな石に投げつけると、湯呑が割れた盛大な音が鳴り響き、山姫が飛び出て来た。
「な、なんですか!?」
「…藤原道長が息吹に求婚する。…それは恐らく今日だと晴明が文を寄越してきた」
「え!?求婚って…主さま、ぼやぼやしてる時間はありませんよ!今すぐ行ってください!」
山姫が焦って主さまを急かすと、息吹が道長の元へ嫁いでここに来なくなる最悪の想像が頭をよぎり、草履を履くとあっという間に空を駆け上がって行ってしまった。
「激しいわねえ…。あんな方だったかしら」
雪女が主さまの後ろ姿を見送りながら息をつくと、山姫は割れた湯呑の欠片を拾いながら声を上げて笑った。
「だから言ったろ?息吹が絡むと主さまはああなっちまうんだってさ」
妖の王がたった1人の人間の娘に右往左往。
「道長…藤原道長…」
息吹にまとわりついていたあの男…
最初からいけ好かない奴だとは思っていたが…息吹を嫁に?
「許すものか。息吹は俺の…」
呟いた時、縁側の方から何か音がしたので襖を開けて外を見てみると、雪女が凛とした居住まいで正座し、しとしとと降り続ける雨を見ていた。
「雪女か…」
「あからさまにがっかりした声を出さないで下さい。息吹さんだと思いました?」
「…」
無言で傍らに座ると、息吹が庭をちょろちょろと動き回って花に水をやっている姿を思い浮かべながら茶を口にした。
「毎日ここまで来てくれるなんて嬉しいでしょう?主さまに会いに来ているのでは?」
「…当然だ。あれは俺の…」
自分のもの、と言いかけると、空から真っ白な鳥が飛んできて1度庭の上を旋回すると紙になり、主さまの手にふわふわと舞い落ちてきた。
「晴明からですね。なんて書いてあるんですか?」
まずは主さまがさっと目を走らせ…そしてみるみる表情が険しくなったので、雪女はそれ以上話しかけるのをやめて主さまを待った。
「…………今日息吹はここに来ない。…くそっ!」
手にしていた湯呑を庭に鎮座する大きな石に投げつけると、湯呑が割れた盛大な音が鳴り響き、山姫が飛び出て来た。
「な、なんですか!?」
「…藤原道長が息吹に求婚する。…それは恐らく今日だと晴明が文を寄越してきた」
「え!?求婚って…主さま、ぼやぼやしてる時間はありませんよ!今すぐ行ってください!」
山姫が焦って主さまを急かすと、息吹が道長の元へ嫁いでここに来なくなる最悪の想像が頭をよぎり、草履を履くとあっという間に空を駆け上がって行ってしまった。
「激しいわねえ…。あんな方だったかしら」
雪女が主さまの後ろ姿を見送りながら息をつくと、山姫は割れた湯呑の欠片を拾いながら声を上げて笑った。
「だから言ったろ?息吹が絡むと主さまはああなっちまうんだってさ」
妖の王がたった1人の人間の娘に右往左往。

