主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】

息吹と居る道長は安らいでいて、2人はとてもお似合いに見えた。


もし息吹が長寿の者であれば、そろそろ成長が止まるはずだ。

また主さまを好いているし、末永く傍に置いて愛してくれるだろう。

だがもし人としての寿命を生きるのであれば、人と一緒になるのが1番良い。


…きっと自分は息吹を看取らなければならない立場になってしまうだろうが…それが愛情というもの。


「…半妖に生まれついた私の運命というところか」


「さっきから何をぶつぶつ言っているんだ?しかし…息吹がここへ来てもう何年になる?そ、そろそろ手放す時期なのでは?」


「もしそなたの元へ嫁に出すならば私も一緒に住むとしよう。毎夜酒を飲み交わして同じ枕を交わそうではないか」


妖しい笑みを浮かべた晴明から座ったまま後ずさりすると、晴明の膝を枕にしてすやすや眠っている息吹に目を遣った。


行燈の光に誘われて蝶が集まり、周囲をひらひらと舞う様は幻想的で、実の娘のように息吹を可愛がっている晴明の今後をも道長は案じた。


「してそなたは嫁は取らぬのか?引く手数多だろう?」


「好いた女は居るが手こずっている。なに、簡単に手に入らぬ方がこちらも燃えて面白い。ちなみに息吹の母代りの女だ」


「妖か!まあ…そなたも半分は妖だし、複雑ではあるが応援しているぞ」


――男前、という言葉とは少し違うが、道長は気概のある男だ。

摂政の地位に収まるのも時間の問題と言われ、自分とこうして通じていても階級を落とされずに歩を進めているのは、この男が柔軟な考えの持ち主でもあり、相手に合せることのできるしなやかさを持ち合わせているからこそ。


息吹にはぜひこういった男と一緒になってほしい。

主さまと一緒になれば…夜は一緒に居られないし、寂しい想いをするかもしれない。


「息吹の傍に居た妖はどうした?息吹に惚れていたのだろう?」


「今も惚れているままだぞ。そなたの好敵手となるやもしれぬなあ。ああ私はどちらを応援すればよいのか。身が引き裂かれる思いだ」


…笑いながら言われても真実味もへったくれもない。

道長はまた無言で酒を呷った。