主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】

「せ、晴明…その…息吹はまた一段と綺麗になったな」


「そうか?一段とというよりは元々あの子は綺麗だったが。それよりも本当に久々だな」


「この前訊ねた時留守だったぞ。どこに行っていたんだ?」


「ああ、恐らく高千穂へ行っていた時だろうな。息吹と温泉に入りに行っていた」


「な、なにっ」


主さまをからかうのも最高に面白いが、道長はもろに感情が顔に出るので思わず晴明は吹き出し、膝を叩いて笑い声を上げた。


「ふふふふ、親子だから別に良いだろう?それより朝廷の方はどうだ?種無しになった帝はその座から引きずり降ろされたのでは?」


「ああその件はもう本当に大変なんだ。種無しになったのは事実らしいが、実は帝には以前身分の低い女に生ませた御子が居るらしくてな…」


ふう、と息を吐いた道長の盃に酒を注ぐと、晴明は目を丸くして身を乗り出した。


「ほう、それは知らなかった。で?その御子を次の帝にするつもりなのか?」


「事実上その御子しか血を引いていないらしい。今血眼になって捜している最中だ」


「ふむ…」


月夜を見上げながら互いに物思いに耽っていると、盆に食事を乗せた息吹が現れて、笑顔で道長に差し出した。


「疲れてらっしゃるお顔をしてるので滋養のつくものを作りました。はい、晴明様の」


「ありがとう。さあ息吹も食べなさい。どうだ道長、息吹のような気の利いた嫁が欲しいだろう?」


「ああ欲しい。どんなに執務が重なろうとも屋敷へ早く帰って癒してもらいたい」


「み、道長様…」


つい本音をぽろりと語ってしまい、息吹の頬が赤くなると、動揺した道長は膝に手にしていた酒を零してしまった。


道長と息吹があたふたしながら対処しているのを楽しそうに見ていた晴明がぽつり。


「やはり人間がいいか、はたまた妖か…。悩みどころだな」


「!晴明…息吹を…その…嫁に出すつもりなのか?」


「はて?私は今そのようなことを言ったか?ああしまった、心の声が口に出てしまったのか」


…晴明が自分をいじって楽しんでいるのを知っている道長は、唇を尖らせて酒を一気に呷った。