結局晴明から牛車に押し込まれるような形で幽玄町を後にし、息吹は牛車の中で晴明を詰った。
「お話の途中だったのにっ」
「主さまは今から百鬼夜行なのだから我が儘はやめなさい」
ぴしゃっと叱られ、しゅんとなると、晴明は息吹を膝に乗せて言い聞かせた。
「いいかい息吹、十六夜はああ見えても妖の頂点に立つ男なのだよ。鬼八の件が片付いたとは言え、十六夜には百鬼を率いてこの国の治安を守らなければならない宿命があるのだ。わかっているね?」
「…はい…。我が儘を言って…ごめんなさい…」
主さまが特別扱いしてくれるから、つい我が儘になってしまう。
ただの主さまの気まぐれで拾われただけだというのに勘違いをして恥ずかしくなり、晴明の屋敷に着くと牛車を飛び出しててきぱきと夕餉の準備を始めた。
「息吹」
「夕餉の準備をします。父様は好きにしてて下さいね。道長様の分も作らなきゃ」
「息吹…きついことを言った。すまぬ」
――息吹は幼い頃から聞き分けの良い子だったのでこうして叱る機会は滅多になかったのだが…
晴明だって、息吹がこの手から離れて行く時が近付いていることはわかっている。
わかっているからこそ焦りを感じ、いっときでも長くこの屋敷で一緒にのんびりと過ごしていきたいという思いもあるのだ。
「大丈夫です。私こそ晴明様を困らせちゃって…」
「なに、子は親を困らせるものだよ。さあ、そろそろしびれを切らしてやって来るぞ」
「?」
息吹の肩に触れてにこにこ微笑みあっていると、庭から叫び声が聴こえた。
「やめろ人魚!烏帽子を返せ!」
「早かったな道長」
久々に顔を出しに来た道長がぷんすか怒りながらどすどすと足音を響かせて現れるとたすき掛けをして今から準備に取り掛かろうという息吹と目が合い、ぽっと頬を赤らめた。
「い、い、いっ、息吹っ、久しぶりだなっ!」
「道長様、お久しぶりです。お元気でしたか?」
晴明はぽうっと見惚れてしまった道長の後頭部を軽く叩きながら背中を押して台所から追い遣った。
「さて積もる話でもしようか」
道長苛め、始まる。
「お話の途中だったのにっ」
「主さまは今から百鬼夜行なのだから我が儘はやめなさい」
ぴしゃっと叱られ、しゅんとなると、晴明は息吹を膝に乗せて言い聞かせた。
「いいかい息吹、十六夜はああ見えても妖の頂点に立つ男なのだよ。鬼八の件が片付いたとは言え、十六夜には百鬼を率いてこの国の治安を守らなければならない宿命があるのだ。わかっているね?」
「…はい…。我が儘を言って…ごめんなさい…」
主さまが特別扱いしてくれるから、つい我が儘になってしまう。
ただの主さまの気まぐれで拾われただけだというのに勘違いをして恥ずかしくなり、晴明の屋敷に着くと牛車を飛び出しててきぱきと夕餉の準備を始めた。
「息吹」
「夕餉の準備をします。父様は好きにしてて下さいね。道長様の分も作らなきゃ」
「息吹…きついことを言った。すまぬ」
――息吹は幼い頃から聞き分けの良い子だったのでこうして叱る機会は滅多になかったのだが…
晴明だって、息吹がこの手から離れて行く時が近付いていることはわかっている。
わかっているからこそ焦りを感じ、いっときでも長くこの屋敷で一緒にのんびりと過ごしていきたいという思いもあるのだ。
「大丈夫です。私こそ晴明様を困らせちゃって…」
「なに、子は親を困らせるものだよ。さあ、そろそろしびれを切らしてやって来るぞ」
「?」
息吹の肩に触れてにこにこ微笑みあっていると、庭から叫び声が聴こえた。
「やめろ人魚!烏帽子を返せ!」
「早かったな道長」
久々に顔を出しに来た道長がぷんすか怒りながらどすどすと足音を響かせて現れるとたすき掛けをして今から準備に取り掛かろうという息吹と目が合い、ぽっと頬を赤らめた。
「い、い、いっ、息吹っ、久しぶりだなっ!」
「道長様、お久しぶりです。お元気でしたか?」
晴明はぽうっと見惚れてしまった道長の後頭部を軽く叩きながら背中を押して台所から追い遣った。
「さて積もる話でもしようか」
道長苛め、始まる。

