主さまが屋敷に戻ると、山姫が珍しくぼんやりしながら縁側で茶を啜っていた。
「主さまお帰りなさいまし」
「どうした、疲れた顔をしているぞ」
「最近煩わしいことばかりで食欲が沸かないんですよ」
自分の色恋には鈍感だが、晴明と山姫という意外な組み合わせの色恋には興味津々の主さまが隣に腰を下ろして煙管を噛んだ。
「恋煩いか?」
「!な、何を見当違いのことを!あんな青二才真っ平ですよ!」
「俺たちはあいつが赤子の頃から知ってはいるが…半妖だが力も強いし色男だと思うが。嫁に行けば幸せにしてもらえると思うぞ」
「私は主さまの世話に日々追われていますから嫁になんかまだまだ行きませんよ。浮気もしそうだし軽いし…絶対いやです」
「そうか?お前にべた惚れだと思うが」
「も、もうその話はやめて下さいな!それよりもあたしは主さまと息吹の方が心配ですよ。早く告白して想いを実らせないと雪男から奪われますよ」
主さまが小さく唇を尖らせ、息吹がせっせと精根こめて育てた庭の花々に目を遣りながら息をついた。
「好いた男が誰だか口を割らない。それより俺と息吹のことに口出しをするな。雪女はどこに居る?」
…あたしのことには口出しをするのに。
そう言いかけてやめると、畳の下を指した。
「地下の雪男の部屋に居ますよ。親子水入らずなんですからそっとしておいてやって下さいな」
「…寝る。息吹が来たら起こせ」
「あの子が起こしにいくでしょうからあたしは起こしませんよ。寝ぼけて殺されるのもいやですからね」
――実際のところ、息吹が屋敷に来るまではそわそわして眠れるわけがないのだが…
自室に入ると続き部屋になっている息吹の部屋の襖を開けて中へ入り、寝転んだ。
この部屋は息吹の香りで満ちている。
恐らく晴明が息吹のために作った香なのだろうが、甘くて息吹によく似合うと思う香りが鼻腔をくすぐり、瞳を閉じようとした時――
小さな机の引き出しが少し開いていたので閉めてやろうと思って手を伸ばすと…
その中には数えきれないほどの髪紐が2本ずつ綺麗に並べられていた。
息吹が、自分とお揃いにしたいために集めていた髪紐だった。
「主さまお帰りなさいまし」
「どうした、疲れた顔をしているぞ」
「最近煩わしいことばかりで食欲が沸かないんですよ」
自分の色恋には鈍感だが、晴明と山姫という意外な組み合わせの色恋には興味津々の主さまが隣に腰を下ろして煙管を噛んだ。
「恋煩いか?」
「!な、何を見当違いのことを!あんな青二才真っ平ですよ!」
「俺たちはあいつが赤子の頃から知ってはいるが…半妖だが力も強いし色男だと思うが。嫁に行けば幸せにしてもらえると思うぞ」
「私は主さまの世話に日々追われていますから嫁になんかまだまだ行きませんよ。浮気もしそうだし軽いし…絶対いやです」
「そうか?お前にべた惚れだと思うが」
「も、もうその話はやめて下さいな!それよりもあたしは主さまと息吹の方が心配ですよ。早く告白して想いを実らせないと雪男から奪われますよ」
主さまが小さく唇を尖らせ、息吹がせっせと精根こめて育てた庭の花々に目を遣りながら息をついた。
「好いた男が誰だか口を割らない。それより俺と息吹のことに口出しをするな。雪女はどこに居る?」
…あたしのことには口出しをするのに。
そう言いかけてやめると、畳の下を指した。
「地下の雪男の部屋に居ますよ。親子水入らずなんですからそっとしておいてやって下さいな」
「…寝る。息吹が来たら起こせ」
「あの子が起こしにいくでしょうからあたしは起こしませんよ。寝ぼけて殺されるのもいやですからね」
――実際のところ、息吹が屋敷に来るまではそわそわして眠れるわけがないのだが…
自室に入ると続き部屋になっている息吹の部屋の襖を開けて中へ入り、寝転んだ。
この部屋は息吹の香りで満ちている。
恐らく晴明が息吹のために作った香なのだろうが、甘くて息吹によく似合うと思う香りが鼻腔をくすぐり、瞳を閉じようとした時――
小さな机の引き出しが少し開いていたので閉めてやろうと思って手を伸ばすと…
その中には数えきれないほどの髪紐が2本ずつ綺麗に並べられていた。
息吹が、自分とお揃いにしたいために集めていた髪紐だった。

