「あのね、主しゃまったらひどいの!」
屋敷に戻る道中、息吹は晴明にあの絵の話をして訴えた。
「ふむふむ、それはひどいことをされたね。で…息吹は何故主さまから育てられているのかを知っているかい?」
裸足で出て来てしまったので、晴明がずっと抱っこしてくれていたのだが…
思わず首に抱き着いていた顔を上げて、目を丸くする。
「え…?それは…私が…捨てられてたから…」
「それだけと思うかい?」
急にうすら寒くなって身を震わせると、晴明は立ち止まって、息吹の頬を撫でた。
「主さまはね、お前を食ってしまおうと思っているんだよ。大きくなるまで待っているんだ」
――晴明が何を言っているのか理解できなかった。
主さまは妖怪で、とても力が強くて美しい。
それにいつも食事に付き合ってくれる。
人なんか、食べるはずがない。
「嘘…主しゃまは人なんか食べないよ!嘘つき、どうしてそんな嘘つくの!?」
「嘘ではない。骨も残さず食ってしまうつもりなんだよ。どうする?逃げたいかい?」
…まだ信じられずに居た。
首を振って否定するが、目の前の男が嘘をついているようには見えず、あの絵の女をまた持ち出す。
「じゃあ…あの絵の女の人は…?」
「…主さまの未来の妻かもしれないね。お前は食われて、その絵の女は主さまの妻になるのだ。ひどい話だろう?」
――主さまにいつか食われてしまう…
今まで身近だった主さまが突然得体の知れない不気味なものに変貌してしまい、がたがた身体を震わせながらまた晴明の首に抱き着いた。
「や、やだ、食べられたくないよ…!」
「では私の言う通りにするんだ。ただし…主さまからは離れないといけないよ。一緒に居ると食われてしまうからね」
主さまと離れる――
それも想像できないことだったが、人としての本能が危険を感じて震えが止まらなくなった。
「うん、どうすれば…いいの…?」
主さまの傍に残る絵の女。
食われる自分…
不公平だ、許せない。
許せない!
――とにかくその一心で、晴明に縋り付く。
屋敷に戻る道中、息吹は晴明にあの絵の話をして訴えた。
「ふむふむ、それはひどいことをされたね。で…息吹は何故主さまから育てられているのかを知っているかい?」
裸足で出て来てしまったので、晴明がずっと抱っこしてくれていたのだが…
思わず首に抱き着いていた顔を上げて、目を丸くする。
「え…?それは…私が…捨てられてたから…」
「それだけと思うかい?」
急にうすら寒くなって身を震わせると、晴明は立ち止まって、息吹の頬を撫でた。
「主さまはね、お前を食ってしまおうと思っているんだよ。大きくなるまで待っているんだ」
――晴明が何を言っているのか理解できなかった。
主さまは妖怪で、とても力が強くて美しい。
それにいつも食事に付き合ってくれる。
人なんか、食べるはずがない。
「嘘…主しゃまは人なんか食べないよ!嘘つき、どうしてそんな嘘つくの!?」
「嘘ではない。骨も残さず食ってしまうつもりなんだよ。どうする?逃げたいかい?」
…まだ信じられずに居た。
首を振って否定するが、目の前の男が嘘をついているようには見えず、あの絵の女をまた持ち出す。
「じゃあ…あの絵の女の人は…?」
「…主さまの未来の妻かもしれないね。お前は食われて、その絵の女は主さまの妻になるのだ。ひどい話だろう?」
――主さまにいつか食われてしまう…
今まで身近だった主さまが突然得体の知れない不気味なものに変貌してしまい、がたがた身体を震わせながらまた晴明の首に抱き着いた。
「や、やだ、食べられたくないよ…!」
「では私の言う通りにするんだ。ただし…主さまからは離れないといけないよ。一緒に居ると食われてしまうからね」
主さまと離れる――
それも想像できないことだったが、人としての本能が危険を感じて震えが止まらなくなった。
「うん、どうすれば…いいの…?」
主さまの傍に残る絵の女。
食われる自分…
不公平だ、許せない。
許せない!
――とにかくその一心で、晴明に縋り付く。

