“私には好きな人が居るんだから!”
鬼八と対峙しつつ息吹がそう叫んだのを聞き逃さなかった主さまは思わず問い質しそうになってしまった。
“それは誰だ”と。
…だが今気を抜いてしまえば流れがこちらに来ているのにそれを逃す羽目になってしまう。
「俺はお前を封印しない。お前を殺し、因縁を終わらせる」
「鵜目姫!戻って来て、あなたは俺のために転生してきたんだろう!?」
「違う!私は息吹なんだから!鵜目姫さんじゃない!」
動揺した鬼八が瞳を揺らしながらなんとか息吹に近づこうとするのを不動明王と主さまが阻み、そして晴明はずっと祝詞を唱えていた。
そうしているうちに息吹の身体からは白い炎が揺らめきはじめ、息吹の両肩を押さえた晴明がさらに強く唱えると…
「鵜目姫!」
『…鬼八様…』
立ち上る白い炎が形となり、ゆらりと立ち上がったのは…鵜目姫だ。
息吹から分離することに成功し、ふらつきながらも晴明が立ち上がると鬼八の脚が止まり、鵜目姫を凝視した。
「鵜目姫…ああ…やっぱりあなただ…」
『鬼八様…私はこの娘の中には居られません。この娘は息吹という名の私の子孫。私たちの呪縛で縛るわけにはいかない。この娘は運命に抗っています』
「だけど…!あなたが今居なくなってしまったら俺は…!」
――主さまは天叢雲を下ろし、鞘に収めた。
鬼八にはもう戦う意志はなく、晴明も不動明王を札に戻らせると息吹の顔を覗き込んで優しく抱きしめた。
半透明の鵜目姫が鬼八に歩み寄り、珊瑚の簪を揺らしながら頬に手を伸ばした。
『天に戻りましょう。あなたが行くべき場所は地獄ではなく、天です。無限の空へ、共に』
「だけど…俺は華月の子孫を許せない…」
『この方は華月ではありません。私たちが憎んだ男はもう居ない。私たちは最初から間違っていたんだわ…。鬼八様…全てを忘れましょう。あなたを殺されたくない』
「鵜目姫…」
殺されてしまえば共に天には昇れない――
鵜目姫が主さまを振り返る。
「お願いです、華月の血縁の者よ」
「…」
息吹が口を開いた。
鬼八と対峙しつつ息吹がそう叫んだのを聞き逃さなかった主さまは思わず問い質しそうになってしまった。
“それは誰だ”と。
…だが今気を抜いてしまえば流れがこちらに来ているのにそれを逃す羽目になってしまう。
「俺はお前を封印しない。お前を殺し、因縁を終わらせる」
「鵜目姫!戻って来て、あなたは俺のために転生してきたんだろう!?」
「違う!私は息吹なんだから!鵜目姫さんじゃない!」
動揺した鬼八が瞳を揺らしながらなんとか息吹に近づこうとするのを不動明王と主さまが阻み、そして晴明はずっと祝詞を唱えていた。
そうしているうちに息吹の身体からは白い炎が揺らめきはじめ、息吹の両肩を押さえた晴明がさらに強く唱えると…
「鵜目姫!」
『…鬼八様…』
立ち上る白い炎が形となり、ゆらりと立ち上がったのは…鵜目姫だ。
息吹から分離することに成功し、ふらつきながらも晴明が立ち上がると鬼八の脚が止まり、鵜目姫を凝視した。
「鵜目姫…ああ…やっぱりあなただ…」
『鬼八様…私はこの娘の中には居られません。この娘は息吹という名の私の子孫。私たちの呪縛で縛るわけにはいかない。この娘は運命に抗っています』
「だけど…!あなたが今居なくなってしまったら俺は…!」
――主さまは天叢雲を下ろし、鞘に収めた。
鬼八にはもう戦う意志はなく、晴明も不動明王を札に戻らせると息吹の顔を覗き込んで優しく抱きしめた。
半透明の鵜目姫が鬼八に歩み寄り、珊瑚の簪を揺らしながら頬に手を伸ばした。
『天に戻りましょう。あなたが行くべき場所は地獄ではなく、天です。無限の空へ、共に』
「だけど…俺は華月の子孫を許せない…」
『この方は華月ではありません。私たちが憎んだ男はもう居ない。私たちは最初から間違っていたんだわ…。鬼八様…全てを忘れましょう。あなたを殺されたくない』
「鵜目姫…」
殺されてしまえば共に天には昇れない――
鵜目姫が主さまを振り返る。
「お願いです、華月の血縁の者よ」
「…」
息吹が口を開いた。

