華月は常に冷徹な印象だったが、この男は違う。
胸に熱い血潮が流れ、息吹を求めるその様は、この男が“鵜目姫”を求めているのではないとわかった。
わかったが、自分が求めているのは鵜目姫だ。
こうして転生してきてくれたのだから、今度こそ、添い遂げる――
「鵜目姫は目覚めたんだ!俺と夫婦になるために!」
「違う。その身体も魂も息吹のもの。鵜目姫には悪いが、勝手に乗っ取られては困る。さあ、出て行け鵜目姫」
天叢雲を嫌がり、じりじりと後退する鬼八を視界に捉えながらも晴明が息吹に駆け寄り、優しく肩を揺するのを見ていた。
徐々に…霧が晴れて行くように息吹の顔には妖艶な表情が消えて行き、鬼八が焦った声を上げた。
「鵜目姫!俺はもう待ちたくない!ようやく転生してきてくれたのに、今度はどの位待てと言うんだ!?」
「待つ必要はない。お前はこれから俺に殺されるんだ」
――主さまの両の額には小さな角が現れ、口からは2本の牙が見えた。
それに天叢雲は主さまの力を吸い、少しでも鬼八の身体に触れればそこから猛烈な勢いで鬼八の力を吸い取ろうとする。
現に先程少し鬼の手に触れただけで鬼八はふらつき、冷や汗をかいていた。
『足りぬ。早く我を鬼八に斬りつけろ』
「わかっている。つべこべ言わず黙っていろ」
まるで兄弟のようにそっくりな2人の対峙をぼんやりと見つめていた息吹は…主さまの真の姿を見て、記憶が蘇ってきた。
そうだ…帝に迫られ、帝の妻にと求められた時に助けに来てくれた主さまもあの姿だったけれど…全然怖くなかったのを覚えている。
そうだ…私は息吹。
私は父様に育てられ、主さまに育てられ、生きてきた息吹という人間――
「鵜目姫さん…私は息吹だから。私の身体なんだから返して…」
「息吹?」
独り言のようにそう呟いたので晴明が顔を覗き込むと、今度ははっきりと口にした。
「鵜目姫さん…私には好きな人が居るんだから出て行って!私の好きな人は鬼八さんじゃない!」
『私は…私は鬼八様を…!』
息吹が攻勢に出た。
胸に熱い血潮が流れ、息吹を求めるその様は、この男が“鵜目姫”を求めているのではないとわかった。
わかったが、自分が求めているのは鵜目姫だ。
こうして転生してきてくれたのだから、今度こそ、添い遂げる――
「鵜目姫は目覚めたんだ!俺と夫婦になるために!」
「違う。その身体も魂も息吹のもの。鵜目姫には悪いが、勝手に乗っ取られては困る。さあ、出て行け鵜目姫」
天叢雲を嫌がり、じりじりと後退する鬼八を視界に捉えながらも晴明が息吹に駆け寄り、優しく肩を揺するのを見ていた。
徐々に…霧が晴れて行くように息吹の顔には妖艶な表情が消えて行き、鬼八が焦った声を上げた。
「鵜目姫!俺はもう待ちたくない!ようやく転生してきてくれたのに、今度はどの位待てと言うんだ!?」
「待つ必要はない。お前はこれから俺に殺されるんだ」
――主さまの両の額には小さな角が現れ、口からは2本の牙が見えた。
それに天叢雲は主さまの力を吸い、少しでも鬼八の身体に触れればそこから猛烈な勢いで鬼八の力を吸い取ろうとする。
現に先程少し鬼の手に触れただけで鬼八はふらつき、冷や汗をかいていた。
『足りぬ。早く我を鬼八に斬りつけろ』
「わかっている。つべこべ言わず黙っていろ」
まるで兄弟のようにそっくりな2人の対峙をぼんやりと見つめていた息吹は…主さまの真の姿を見て、記憶が蘇ってきた。
そうだ…帝に迫られ、帝の妻にと求められた時に助けに来てくれた主さまもあの姿だったけれど…全然怖くなかったのを覚えている。
そうだ…私は息吹。
私は父様に育てられ、主さまに育てられ、生きてきた息吹という人間――
「鵜目姫さん…私は息吹だから。私の身体なんだから返して…」
「息吹?」
独り言のようにそう呟いたので晴明が顔を覗き込むと、今度ははっきりと口にした。
「鵜目姫さん…私には好きな人が居るんだから出て行って!私の好きな人は鬼八さんじゃない!」
『私は…私は鬼八様を…!』
息吹が攻勢に出た。

