主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】

『見つけた…!』


意識を張り巡らしていた華月は鵜目姫の気配を捉えた。


鵜目姫はいつも花畑に居た。

だから鵜目姫が洞窟から外へ出る時は必ず花畑に来ると予想して、重点的に探っていたのだ。


――華月が走り出す。


…そして華月の中の主さまは、抗おうにもどうしても華月と感情が同調してしまい、華月を止めることができないでいた。


「やめろ…やめろ…!」


『鵜目姫…!』


たった数度言葉を交わしただけなのに、こんなにも心惹かれるなんて。

鬼八に抱かれたのかと思うと余計に憎悪の感情は膨れ上がり、華月と主さまを焦がす。


「息吹が呼んでるんだ。早く戻らないと…!華月、やめろ!」


『鵜目姫…あなたの悪夢はもうすぐ終わる。俺が立ち切ってやる…!』


だが華月の脚は止まらず、ものすごい速さで森を駆け抜けると…鵜目姫の姿を捉えた。


幸せそうな笑顔を浮かべて、花の冠を編んでいた。


昨晩鬼八と愛し合ったのかと思うとはらわたが煮えくり返り、気配もなく鵜目姫の背後に立つと、細い肩に手を置いた。



『きゃ…っ、か、華月様…!!』


『見つけた。さあ鵜目姫、行こう』


『いや…っ!私と鬼八様は昨晩結ばれたのです!離して下さい、私と鬼八様のことは放っておいて下さい!』


『…鵜目姫!』



乱暴に腕を掴んで立ち上がらせようとした時――


鵜目姫の中の息吹と、

華月の中の主さまが…同時に声を上げた。



「主さま!?」


「…息吹!?」



――鵜目姫と華月の動きが止まる。


互いの身体の中から聴こえた自分ではない何者かの声に戸惑い、見下ろしたが…


それを振り払ったのは、華月だった。


『行こう鵜目姫。あなたは…俺の妻になるんだ』


『いや!離して下さい!鬼八様、きは……ぅっ』


このままでは鬼八に勘付かれてしまう――

止む無く華月は鵜目姫の鳩尾に素早く拳を繰り出すと失神させて軽い身体を抱き上げた。



「主さまだ、主さま!」


「息吹…?本当に息吹なのか…?」



巡り合う――