息吹は鵜目姫の中でうずくまりながら自身の身体を抱きしめていた。
「ひどい…私…こんな…!」
好きな男とこうなりたかったのに――
鬼八は違う。
鬼八は鵜目姫の夫。
私が…私が好きな人は――
――鬼八と結ばれた鵜目姫は腕枕をしてもらいながら心から幸せそうな表情で見つめ合っていた。
そうだ、こんな風に…
こんな風に、見つめ合って…腕枕をして…時々意地悪をしてほしいのに。
…誰に?
「…主さま…」
名を呼ぶと、じわじわと胸から込み上げてくるものがあってせつなくなった。
「十六夜さん…!」
主さまの真の名――
それを口にすると、鵜目姫がぴくりと顔を上げて自身の胸を見下ろした。
『鵜目姫…どうしたの?』
『いえ…何だか急に……』
瞳からほろりと涙が零れて鬼八が身体を起こすと、鵜目姫は鬼八に背を向けて寝返りを打ち、顔を隠した。
『急にせつなくなって…』
『後悔…してる?』
『!違います!わからないけれど急に悲しくなったの』
――息吹は主さまの名を呼び続けていた。
「主さま、助けて…!ここに来て!主さま、こんなのやだ…!私…こんなのやだよ!」
頭に浮かぶのは、いつも意地悪をするけれど時に優しくしてくれて時に笑いかけてくれる主さまの不器用な笑顔。
…あの絵が自分の未来の姿なのだと知ってどれほど嬉しかったことか。
あの絵を大切にずっと懐に入れて持ち続けてくれていた主さまが…愛しい。
「主さま…好きだよ」
言葉に出すと、ようやく自分の想いと向き合えた。
今まで大切に育ててくれた主さま。
食われることでひとつになれるのなら…悔いはない。
ずっとずっと、一緒に生きてゆける。
…老いることなく。
「主さま、助けて!」
――その時苦しそうな表情をしていた主さまの表情が和らいだ。
「おや、十六夜?」
晴明が声をかけると天叢雲の妖気も徐々に小さくなり、晴明とほっとさせた。
「…早く戻って来い、十六夜。面白くないじゃないか」
にたり笑い復活。
「ひどい…私…こんな…!」
好きな男とこうなりたかったのに――
鬼八は違う。
鬼八は鵜目姫の夫。
私が…私が好きな人は――
――鬼八と結ばれた鵜目姫は腕枕をしてもらいながら心から幸せそうな表情で見つめ合っていた。
そうだ、こんな風に…
こんな風に、見つめ合って…腕枕をして…時々意地悪をしてほしいのに。
…誰に?
「…主さま…」
名を呼ぶと、じわじわと胸から込み上げてくるものがあってせつなくなった。
「十六夜さん…!」
主さまの真の名――
それを口にすると、鵜目姫がぴくりと顔を上げて自身の胸を見下ろした。
『鵜目姫…どうしたの?』
『いえ…何だか急に……』
瞳からほろりと涙が零れて鬼八が身体を起こすと、鵜目姫は鬼八に背を向けて寝返りを打ち、顔を隠した。
『急にせつなくなって…』
『後悔…してる?』
『!違います!わからないけれど急に悲しくなったの』
――息吹は主さまの名を呼び続けていた。
「主さま、助けて…!ここに来て!主さま、こんなのやだ…!私…こんなのやだよ!」
頭に浮かぶのは、いつも意地悪をするけれど時に優しくしてくれて時に笑いかけてくれる主さまの不器用な笑顔。
…あの絵が自分の未来の姿なのだと知ってどれほど嬉しかったことか。
あの絵を大切にずっと懐に入れて持ち続けてくれていた主さまが…愛しい。
「主さま…好きだよ」
言葉に出すと、ようやく自分の想いと向き合えた。
今まで大切に育ててくれた主さま。
食われることでひとつになれるのなら…悔いはない。
ずっとずっと、一緒に生きてゆける。
…老いることなく。
「主さま、助けて!」
――その時苦しそうな表情をしていた主さまの表情が和らいだ。
「おや、十六夜?」
晴明が声をかけると天叢雲の妖気も徐々に小さくなり、晴明とほっとさせた。
「…早く戻って来い、十六夜。面白くないじゃないか」
にたり笑い復活。

