その頃主さまは華月の中で苦悶していた。
…華月の心が痛いほどにわかる。
焦がれているものを目の前にして、それが絶対に手に入らない絶望感…
手に入らないのならば、壊してしまった方がいい――
そう思いながらも鵜目姫には生きていてほしい、と願う華月…
もし…
もし自分が同じ立場ならば…
息吹の想い人を絶対に殺してしまうという自信があった。
『鵜目姫…』
出会って数日しか経ってはいない鵜目姫に一目惚れした華月は、その想い人が鬼八であることにも憎悪を抱いた。
…息吹もいつかは好きな相手ができて、その相手との逢瀬の時間を楽しそうに自分に話す日が来るのだろうか。
1分1秒たりとも、そんな話は聞きたくはない。
相手が晴明であっても…雪男であっても…誰であっても、必ずこの手で命を摘み取ってやる――
「息吹…会いたい…!」
『鵜目姫…会いたい…』
主さまと華月の心が重なり合う。
――そうしながら華月は乳ヶ岩屋の鬼八が住んでいる洞窟周辺で立ち往生していた。
…この付近に間違いはなく、ただ…鬼八の術を解く術がない。
鬼八は鬼族最強の男だ。
神と同等の力を持つ故に同族からも敬遠され、こんな所にひとりで住んでいたのに。
『…このままひとりで住んでいればいいものを』
…尊敬していたし、敬っていたし、憧れてもいた鬼八――
いつからか、それは嫌悪となり、恨みとなり、憎悪となった。
『同族嫌悪か。鬼八に嫉妬するあまりの復讐か?鵜目姫は幸せそうに見えたぞ』
三毛入野命のその言葉に目の前が真っ赤になった華月は目にも止まらぬ速さで短剣を抜くと三毛入野命に向かって投げた。
その短剣が三毛入野命の頬をかすめて木に突き刺さった時…
大木は呆気なく音を立てて倒れ、皆をぞっとさせた。
『…余計な詮索はするな。鬼八を倒せれば、それでいい』
『う、うむ…わかった』
華月の瞳に宿る鬼火に恐れをなした三毛入野命が怖気づくと、華月は小さく舌打ちをして親指を噛んだ。
『絶対に…殺す…』
手に入れるために――
…華月の心が痛いほどにわかる。
焦がれているものを目の前にして、それが絶対に手に入らない絶望感…
手に入らないのならば、壊してしまった方がいい――
そう思いながらも鵜目姫には生きていてほしい、と願う華月…
もし…
もし自分が同じ立場ならば…
息吹の想い人を絶対に殺してしまうという自信があった。
『鵜目姫…』
出会って数日しか経ってはいない鵜目姫に一目惚れした華月は、その想い人が鬼八であることにも憎悪を抱いた。
…息吹もいつかは好きな相手ができて、その相手との逢瀬の時間を楽しそうに自分に話す日が来るのだろうか。
1分1秒たりとも、そんな話は聞きたくはない。
相手が晴明であっても…雪男であっても…誰であっても、必ずこの手で命を摘み取ってやる――
「息吹…会いたい…!」
『鵜目姫…会いたい…』
主さまと華月の心が重なり合う。
――そうしながら華月は乳ヶ岩屋の鬼八が住んでいる洞窟周辺で立ち往生していた。
…この付近に間違いはなく、ただ…鬼八の術を解く術がない。
鬼八は鬼族最強の男だ。
神と同等の力を持つ故に同族からも敬遠され、こんな所にひとりで住んでいたのに。
『…このままひとりで住んでいればいいものを』
…尊敬していたし、敬っていたし、憧れてもいた鬼八――
いつからか、それは嫌悪となり、恨みとなり、憎悪となった。
『同族嫌悪か。鬼八に嫉妬するあまりの復讐か?鵜目姫は幸せそうに見えたぞ』
三毛入野命のその言葉に目の前が真っ赤になった華月は目にも止まらぬ速さで短剣を抜くと三毛入野命に向かって投げた。
その短剣が三毛入野命の頬をかすめて木に突き刺さった時…
大木は呆気なく音を立てて倒れ、皆をぞっとさせた。
『…余計な詮索はするな。鬼八を倒せれば、それでいい』
『う、うむ…わかった』
華月の瞳に宿る鬼火に恐れをなした三毛入野命が怖気づくと、華月は小さく舌打ちをして親指を噛んだ。
『絶対に…殺す…』
手に入れるために――

