確かに“一緒に生きたい”と言った。
そんなことが、有り得るのだろうか?
「でも…雪ちゃん…嬉しいけど私…」
「俺の母さんは今も父さんと暮らしてた家に住んでる。お前を看取った後は、雪に戻る。自然に戻って、今度は人に生まれ変わるんだ。…息吹と一緒に」
「雪ちゃん…」
「2人きりの時は氷雨って呼んでくれよ。息吹…」
――綺麗な男だとは思っていたけれど、小さく笑った雪男はいつも以上に綺麗で男らしく、息吹はかあっと頬が熱くなって後ずさりした。
「あ、あの…私…戻るね。主さまたちが心配してると思うから」
「息吹、今俺が言ったこと忘れんなよ。お前は主さまのことが気になるんだろうけど、主さまは駄目だ。妖の王として強い妖力を持つ女の妖と夫婦になって、力の強い子を作らなきゃいけないんだから」
「………うん、わかってる」
――やっぱり主さまからは、からかわれているだけなのだろう。
雪男が言った通り、主さまは強い血脈を守っていかなければならない。
こんな、たかが人間の自分に構っていられる時間など、ないはずなのに――
「大丈夫。私は主さまの気まぐれで傍に置かれてるってこと、ちゃんと私は知ってるから」
「でも俺が息吹を嫁さんに欲しいって言ったのは気まぐれじゃねえから。…もう行けよ、恥ずかしくなってきた…」
さらさらの青い髪をがりがりとかき上げてしきりに照れる雪男に心がふんわりと温かくなった。
「じゃあね雪ちゃん。おやすみなさい」
「ん」
――部屋を出て廊下を歩いている間、自分を看取ってくれて、一緒に生まれ変わりたいと言ってくれた雪男の言葉は息吹の胸に響き、笑顔を呼び戻していた。
「雪ちゃん……氷雨…」
名を呼ぶとなおいっそう近く感じる。
主さまの時もそう感じた。
“十六夜”と呼ぶと、絆を感じた。
「戻りました」
息吹が主さまの部屋に戻ると主さまは背を向けて縁側で寝転がっていて、晴明は猫じゃらしで主さまの首をくすぐっているところだった。
「ふふ、何してるの?」
主さまの返事はない。
振り向かない。
そんなことが、有り得るのだろうか?
「でも…雪ちゃん…嬉しいけど私…」
「俺の母さんは今も父さんと暮らしてた家に住んでる。お前を看取った後は、雪に戻る。自然に戻って、今度は人に生まれ変わるんだ。…息吹と一緒に」
「雪ちゃん…」
「2人きりの時は氷雨って呼んでくれよ。息吹…」
――綺麗な男だとは思っていたけれど、小さく笑った雪男はいつも以上に綺麗で男らしく、息吹はかあっと頬が熱くなって後ずさりした。
「あ、あの…私…戻るね。主さまたちが心配してると思うから」
「息吹、今俺が言ったこと忘れんなよ。お前は主さまのことが気になるんだろうけど、主さまは駄目だ。妖の王として強い妖力を持つ女の妖と夫婦になって、力の強い子を作らなきゃいけないんだから」
「………うん、わかってる」
――やっぱり主さまからは、からかわれているだけなのだろう。
雪男が言った通り、主さまは強い血脈を守っていかなければならない。
こんな、たかが人間の自分に構っていられる時間など、ないはずなのに――
「大丈夫。私は主さまの気まぐれで傍に置かれてるってこと、ちゃんと私は知ってるから」
「でも俺が息吹を嫁さんに欲しいって言ったのは気まぐれじゃねえから。…もう行けよ、恥ずかしくなってきた…」
さらさらの青い髪をがりがりとかき上げてしきりに照れる雪男に心がふんわりと温かくなった。
「じゃあね雪ちゃん。おやすみなさい」
「ん」
――部屋を出て廊下を歩いている間、自分を看取ってくれて、一緒に生まれ変わりたいと言ってくれた雪男の言葉は息吹の胸に響き、笑顔を呼び戻していた。
「雪ちゃん……氷雨…」
名を呼ぶとなおいっそう近く感じる。
主さまの時もそう感じた。
“十六夜”と呼ぶと、絆を感じた。
「戻りました」
息吹が主さまの部屋に戻ると主さまは背を向けて縁側で寝転がっていて、晴明は猫じゃらしで主さまの首をくすぐっているところだった。
「ふふ、何してるの?」
主さまの返事はない。
振り向かない。

