その夜の百鬼夜行。
いつものように百鬼たちが集結してきて、息吹を取り囲んで遊んでやっていた。
そんな中、主さまは庭でわいわいやっている百鬼たちの中からとある1匹の妖に目をつけた。
牛の身体に人間の顔を持つ件(くだん)という名の妖で、この妖は予言をすることで知られており、故に滅多に話すことはない。
凶事を語ることで知られており、主さまは件と言葉を交わしたことはなかった。
「件、こっちに来い」
「…」
何も喋らないまま牛の巨体がゆっくりと主さまの前に来て、両脚を折って座った。
「俺にまつわる予言はあるか?」
男の顔をした件の口がゆっくりと開いた。
「…いいのですか?」
「ああ。包み隠さず話せ。…凶事があるんだな?」
「…はい」
しばらく見つめ合っていると、またゆっくりと口が開いた。
「あなたは大切なものを失います。とてもとても大切なものを」
「…それはなんだ?」
「言えません。言えば私は命を落とします。予言が当たってしまうと私は死んでしまうのです」
そのまま妖の集団に紛れ込んで消えてしまい、結局主さまはもやもやさせられただけで、いらいらと足踏みをした。
「大切なものだと…?一体何だ?」
「主しゃまー」
――件と話をしていたので遠慮して近付かなかった息吹が駆け寄ってきて櫛で髪を梳いてきた。
「どうした」
「お仕事行くんでしょ?私のと同じのして行ってねー」
濃紺の髪紐で緩く髪を縛られて頭を撫でてきた息吹の手を掴むと膝に座らせて顔をまじまじと見た。
「…まさかな。違う。絶対に違う」
「?主しゃま?」
「じゃあ行って来る。いい子にして寝てるんだぞ」
「…うん。行ってらっしゃい」
いつもは軽快に明るく見送ってくれるのに、今日は少し悲しそうな顔をするので立ち上がるに立ち上がれずむにっと頬を引っ張る。
「どうした?」
「主しゃま…私もお仕事について行きたいな。駄目?」
「主さま、今日は息吹を拾った日なんですよ。連れて行ってやりましょうよ!」
真剣に悩んだ。
いつものように百鬼たちが集結してきて、息吹を取り囲んで遊んでやっていた。
そんな中、主さまは庭でわいわいやっている百鬼たちの中からとある1匹の妖に目をつけた。
牛の身体に人間の顔を持つ件(くだん)という名の妖で、この妖は予言をすることで知られており、故に滅多に話すことはない。
凶事を語ることで知られており、主さまは件と言葉を交わしたことはなかった。
「件、こっちに来い」
「…」
何も喋らないまま牛の巨体がゆっくりと主さまの前に来て、両脚を折って座った。
「俺にまつわる予言はあるか?」
男の顔をした件の口がゆっくりと開いた。
「…いいのですか?」
「ああ。包み隠さず話せ。…凶事があるんだな?」
「…はい」
しばらく見つめ合っていると、またゆっくりと口が開いた。
「あなたは大切なものを失います。とてもとても大切なものを」
「…それはなんだ?」
「言えません。言えば私は命を落とします。予言が当たってしまうと私は死んでしまうのです」
そのまま妖の集団に紛れ込んで消えてしまい、結局主さまはもやもやさせられただけで、いらいらと足踏みをした。
「大切なものだと…?一体何だ?」
「主しゃまー」
――件と話をしていたので遠慮して近付かなかった息吹が駆け寄ってきて櫛で髪を梳いてきた。
「どうした」
「お仕事行くんでしょ?私のと同じのして行ってねー」
濃紺の髪紐で緩く髪を縛られて頭を撫でてきた息吹の手を掴むと膝に座らせて顔をまじまじと見た。
「…まさかな。違う。絶対に違う」
「?主しゃま?」
「じゃあ行って来る。いい子にして寝てるんだぞ」
「…うん。行ってらっしゃい」
いつもは軽快に明るく見送ってくれるのに、今日は少し悲しそうな顔をするので立ち上がるに立ち上がれずむにっと頬を引っ張る。
「どうした?」
「主しゃま…私もお仕事について行きたいな。駄目?」
「主さま、今日は息吹を拾った日なんですよ。連れて行ってやりましょうよ!」
真剣に悩んだ。

