息吹の手をしっかりと握った主さまは、晴明と雪男からねちねちと小言を言われていた。
「私の娘に手を出すつもりなのか?いつかそなたとは決着をつけなければと思っていたぞ」
「お前如き片手でねじ伏せられる」
「鬼八は主さまにしか封じることはできないんだから手を離せよ。俺がずっと手を握っててやるからさ」
雪男が手を差し伸べると息吹は反射的に主さまの背中に隠れてしまって、そして慌ててまた顔を出すと雪男の所在なげな手に軽く触れた。
「ご、ごめんなさい雪ちゃん…」
「…や、いいんだ」
雪男が隅に寝ころがって拗ねてしまい、息吹はおろおろしてしまったが…
主さまは笑いをかみ殺すのに必死になっていた。
「そろそろ鬼八塚が近い。気を引き締めて集中しろ」
主さまはなんだか先程から急にしおらしくなった息吹に胸をときめかせながらも、御簾を少し上げて外を見た。
――明らかに空気が変わってきていた。
鬼八が何千年もの間封印されてため込んでいた怨念が渦巻き、木々を枯れさせて混沌とした景色が続いている。
隣でぞくっと身体を震わせた息吹もそれを感じたのか、主さまの袖を握って顔を伏せていて、抱き上げて膝に乗せると言い聞かせた。
「晴明が言ったように息を殺して、声を出すな。あれはお前を捜している。捕えられたら連れ去られて、妻にされるぞ」
「…やだ。私は私が好きな方の下に嫁ぎたいです」
「……それまでは俺が守ってやる。いいな」
「うん…。主さま、信じてます」
――主さまたちがまず向かったのは、鬼八の首を封じている首塚だった。
これが復活すると、まずいことになる。
なので急いで向かったのだが…
「主さま、首が無くなってます!!」
牛車が鬼八塚の前で止まり、その声で慌てて外に飛び出ると…
鬼八の首を封じていた墓石は倒れ、しめ縄は切られて、主さまは舌打ちをしながら墓石が立っていた位置の穴を覗き込んだ。
…首を封じていた壺が割られている。
鬼八は復活してしまったのだ。
「なんてことだ。十六夜…」
「ああ。必ず見つける」
恐ろしき悪鬼を――
「私の娘に手を出すつもりなのか?いつかそなたとは決着をつけなければと思っていたぞ」
「お前如き片手でねじ伏せられる」
「鬼八は主さまにしか封じることはできないんだから手を離せよ。俺がずっと手を握っててやるからさ」
雪男が手を差し伸べると息吹は反射的に主さまの背中に隠れてしまって、そして慌ててまた顔を出すと雪男の所在なげな手に軽く触れた。
「ご、ごめんなさい雪ちゃん…」
「…や、いいんだ」
雪男が隅に寝ころがって拗ねてしまい、息吹はおろおろしてしまったが…
主さまは笑いをかみ殺すのに必死になっていた。
「そろそろ鬼八塚が近い。気を引き締めて集中しろ」
主さまはなんだか先程から急にしおらしくなった息吹に胸をときめかせながらも、御簾を少し上げて外を見た。
――明らかに空気が変わってきていた。
鬼八が何千年もの間封印されてため込んでいた怨念が渦巻き、木々を枯れさせて混沌とした景色が続いている。
隣でぞくっと身体を震わせた息吹もそれを感じたのか、主さまの袖を握って顔を伏せていて、抱き上げて膝に乗せると言い聞かせた。
「晴明が言ったように息を殺して、声を出すな。あれはお前を捜している。捕えられたら連れ去られて、妻にされるぞ」
「…やだ。私は私が好きな方の下に嫁ぎたいです」
「……それまでは俺が守ってやる。いいな」
「うん…。主さま、信じてます」
――主さまたちがまず向かったのは、鬼八の首を封じている首塚だった。
これが復活すると、まずいことになる。
なので急いで向かったのだが…
「主さま、首が無くなってます!!」
牛車が鬼八塚の前で止まり、その声で慌てて外に飛び出ると…
鬼八の首を封じていた墓石は倒れ、しめ縄は切られて、主さまは舌打ちをしながら墓石が立っていた位置の穴を覗き込んだ。
…首を封じていた壺が割られている。
鬼八は復活してしまったのだ。
「なんてことだ。十六夜…」
「ああ。必ず見つける」
恐ろしき悪鬼を――

