息吹が晴明の屋敷へ来た時は10になった時だったが、
あの頃は毎日晴明が一緒にお風呂に入ってくれて、毎日一緒に眠ってくれていたので、晴明と風呂に入ること自体違和感はない。
だが、問題は…背中の“あれ”だ。
「あの…父様…本当に一緒に…入る、んだよね?」
「そなたが先に誘ってきたのだろう?約束を違えるような子は私は嫌いだよ」
温泉のある竹藪の前まで移動してきてしまっていた。
主さまはなんだか難しそうな顔をしているし、雪男は温泉には近づけないので、重々注意だけはした。
「なんにもないだろうけど…一応気を付けろよなっ」
「え?うん、よくわかんないけどわかった」
1度部屋に戻って身体が隠れるほどの大きな手拭いを持ってきたので、少なくとも背中のものは隠すことができるだろう。
…どうやら主さまもそれを危惧しているらしく、さっきから何かを言いたそうな顔をしているのはこのことだと悟って小声で話しかけた。
「父様には言わないから大丈夫」
「…」
「息吹、先に入っているよ」
先に晴明が行ってしまい、すぐ後に続くと直衣を脱いでいるところだった。
意外にすらりとしていて男らしい裸に急に恥ずかしくなって俯いていると、晴明が湯に入って気持ちよさそうな声を上げた。
「ああ、これはいいね。息吹、背中を向けているからそなたも入りなさい」
「あ、え、は、はい。じゃあ…」
慌てて浴衣を脱いで中に飛び込み、泳ぐようにして晴明の隣に移動すると、親子は久々に2人きりの時間を取れて笑い合った。
「主さまがそなたに悪戯をしたのは知っている。どれ、私に見せてごらん」
「だ、駄目!…からかわれただけです」
――危うく本気で息吹を抱きそうになった主さまの心情を哀れに思いつつ、
それでもまだ愛娘には嫁に行かずにいてほしいという親心を持つ晴明は、悩ましげなため息をついて息吹の頬を指でくすぐった。
「息吹、食われぬように気をつけなさい。主さまはああ見えて肉食だからね」
「はい。父様、高千穂っていい所ですね」
空は澄み渡り、空気も美味しい。
親子は背中合わせにもたれかかった。
あの頃は毎日晴明が一緒にお風呂に入ってくれて、毎日一緒に眠ってくれていたので、晴明と風呂に入ること自体違和感はない。
だが、問題は…背中の“あれ”だ。
「あの…父様…本当に一緒に…入る、んだよね?」
「そなたが先に誘ってきたのだろう?約束を違えるような子は私は嫌いだよ」
温泉のある竹藪の前まで移動してきてしまっていた。
主さまはなんだか難しそうな顔をしているし、雪男は温泉には近づけないので、重々注意だけはした。
「なんにもないだろうけど…一応気を付けろよなっ」
「え?うん、よくわかんないけどわかった」
1度部屋に戻って身体が隠れるほどの大きな手拭いを持ってきたので、少なくとも背中のものは隠すことができるだろう。
…どうやら主さまもそれを危惧しているらしく、さっきから何かを言いたそうな顔をしているのはこのことだと悟って小声で話しかけた。
「父様には言わないから大丈夫」
「…」
「息吹、先に入っているよ」
先に晴明が行ってしまい、すぐ後に続くと直衣を脱いでいるところだった。
意外にすらりとしていて男らしい裸に急に恥ずかしくなって俯いていると、晴明が湯に入って気持ちよさそうな声を上げた。
「ああ、これはいいね。息吹、背中を向けているからそなたも入りなさい」
「あ、え、は、はい。じゃあ…」
慌てて浴衣を脱いで中に飛び込み、泳ぐようにして晴明の隣に移動すると、親子は久々に2人きりの時間を取れて笑い合った。
「主さまがそなたに悪戯をしたのは知っている。どれ、私に見せてごらん」
「だ、駄目!…からかわれただけです」
――危うく本気で息吹を抱きそうになった主さまの心情を哀れに思いつつ、
それでもまだ愛娘には嫁に行かずにいてほしいという親心を持つ晴明は、悩ましげなため息をついて息吹の頬を指でくすぐった。
「息吹、食われぬように気をつけなさい。主さまはああ見えて肉食だからね」
「はい。父様、高千穂っていい所ですね」
空は澄み渡り、空気も美味しい。
親子は背中合わせにもたれかかった。

