「終わったぞ」
少しだけ襖が開いて晴明が顔を出すと、息吹はまたころんと寝転んで見事な庭園を見つめていた。
「興奮は収まったか?未だ息吹が見たことのないようなものを見せるのではないぞ」
「…うるさい!あまり俺を挑発するなよ、お前のあることないこと全て山姫に吹き込んでやるからな」
「母様?母様がどうしたの?」
「いやいや、父様と母様が本当の父様と母様に…」
説明しかけた時雪男が戻って来て、いつも通りの息吹にほっとしてくしゃっと笑顔を見せた。
「ちょっとは寝れたか?」
「うん。…ねえ父様、ずっと一緒に居て下さいね。私…鬼八さんのことが怖いの」
息吹以外の3人が顔を見合わせて、各々が力強く頷くと息吹を囲むようにして座って肩や頭に触れて安心感を与えた。
「私たちに任せておきなさい。主さまの百鬼夜行は心強いし、何より私が最強だからね。そなたの傍にいつも居るとも」
「お、俺もっ」
「……じゃあ俺は用無しだな」
主さまが拗ねてしまって、息吹が笑い声を上げながら固い腕に触れた。
「頼りにしてます。私を守ってね」
「…ああ」
一気に機嫌が戻って口元がにやけそうになった時、腕に触れていた息吹の手がびくっと引きつったので顔を上げると…
息吹は庭を見つめたまま、硬直していた。
その視線の先には、絡新婦の姿。
吊った瞳を赤銅色に輝かせながら息吹を睨みつけていて、
あれほど忠告しておいたのに息吹に絡もうとする絡新婦の嫉妬心が醜く、舌打ちをしながら息吹を抱き寄せて胸に顔を押し付けた。
「主さま…」
「あれの処断は俺に任せておけ。お前は俺の傍に居ればいい」
――雪男の頬が膨れ、晴明がふっと苦笑しながら息吹の頭を撫でた。
「女泣かせな男だろう?父様がそなたに見合いの男を選んできてあげるからね」
「私…父様みたいな人がいいな」
「おやおや嬉しいことを言ってくれるね。では私に嫁ぐかい?」
主さまと雪男から射殺すような瞳で見られて肩を竦めると、膝枕をねだってきた息吹の頭を撫でながら庭に目をやった。
絡新婦は居なくなっていた。
少しだけ襖が開いて晴明が顔を出すと、息吹はまたころんと寝転んで見事な庭園を見つめていた。
「興奮は収まったか?未だ息吹が見たことのないようなものを見せるのではないぞ」
「…うるさい!あまり俺を挑発するなよ、お前のあることないこと全て山姫に吹き込んでやるからな」
「母様?母様がどうしたの?」
「いやいや、父様と母様が本当の父様と母様に…」
説明しかけた時雪男が戻って来て、いつも通りの息吹にほっとしてくしゃっと笑顔を見せた。
「ちょっとは寝れたか?」
「うん。…ねえ父様、ずっと一緒に居て下さいね。私…鬼八さんのことが怖いの」
息吹以外の3人が顔を見合わせて、各々が力強く頷くと息吹を囲むようにして座って肩や頭に触れて安心感を与えた。
「私たちに任せておきなさい。主さまの百鬼夜行は心強いし、何より私が最強だからね。そなたの傍にいつも居るとも」
「お、俺もっ」
「……じゃあ俺は用無しだな」
主さまが拗ねてしまって、息吹が笑い声を上げながら固い腕に触れた。
「頼りにしてます。私を守ってね」
「…ああ」
一気に機嫌が戻って口元がにやけそうになった時、腕に触れていた息吹の手がびくっと引きつったので顔を上げると…
息吹は庭を見つめたまま、硬直していた。
その視線の先には、絡新婦の姿。
吊った瞳を赤銅色に輝かせながら息吹を睨みつけていて、
あれほど忠告しておいたのに息吹に絡もうとする絡新婦の嫉妬心が醜く、舌打ちをしながら息吹を抱き寄せて胸に顔を押し付けた。
「主さま…」
「あれの処断は俺に任せておけ。お前は俺の傍に居ればいい」
――雪男の頬が膨れ、晴明がふっと苦笑しながら息吹の頭を撫でた。
「女泣かせな男だろう?父様がそなたに見合いの男を選んできてあげるからね」
「私…父様みたいな人がいいな」
「おやおや嬉しいことを言ってくれるね。では私に嫁ぐかい?」
主さまと雪男から射殺すような瞳で見られて肩を竦めると、膝枕をねだってきた息吹の頭を撫でながら庭に目をやった。
絡新婦は居なくなっていた。

