額を伝う冷や汗を拭いながら息吹が寝ている続き部屋の襖を開けると、
先程の殺気にも動じずにすやすやと眠っていて、少し呆れながら傍らに座ると頬にかかる髪を払ってやった。
…可愛い寝顔だ。
「…俺もどうかしてるぜ」
…ここに泊まっている間は息吹から絶対に離れずにいよう。
あの狡猾で主さまに心底惚れている絡新婦は何をするかわからない。
「…好きだ、息吹」
囁いて頬に口づけをした。
――まただ。
また遠くから声がする。
『鵜目姫…ここまでよく来てくれた。待っていたよ』
「あなたは誰?」
はじめて夢に出て来た時の声の主は荒々しい口調だったが、今回は違う。
とても優しくて、少しだけ主さまの声に似ている気がして、つい親しげに問うと、今まで声だけだった男が真っ暗闇からゆっくりと姿を現わした。
「え……、主さま…!?」
『違うよ」
「で、でも…」
――主さまはいつも冷静でいてあまり笑ったりすることはないが、目の前に立ったこの男は違った。
主さまは髪が長いが、この男は短い。
目元も優しくて、どちらかといえば雰囲気は晴明に似ている。
こんな優しそうな男が何故長い間封じられているのか…
息吹はそれが疑問で、ずっと上にある男の顔を見上げた。
「私は鵜目姫っていう方じゃないの。だからあなたが捜してる人とは違います」
『鬼八』
「え?」
『俺のことは鬼八と呼んでほしい。あなたは鵜目姫に違いない。顔立ちだって…雰囲気だって…瓜二つだ。鵜目姫、今度こそ離さないよ。今度こそ…』
急に右腕を強く掴まれて怖くなって身を引くと、また強く引き寄せられて鬼八の胸に倒れ込んでしまった。
「や…っ!」
『迎えに行くからね。俺と2人で今度こそ、ずっと一緒に生きよう』
「私は息吹なの!鬼八さ、離してっ!…主さま、主さまーっ!」
叫んだ途端、明るい光が暗闇を切り裂いて、鬼八が手を離して暗闇に消えて行った。
「息吹、大丈夫か」
「…主さま…」
…助けに来てくれた…
息吹は顔を覆って抱き着いた。
先程の殺気にも動じずにすやすやと眠っていて、少し呆れながら傍らに座ると頬にかかる髪を払ってやった。
…可愛い寝顔だ。
「…俺もどうかしてるぜ」
…ここに泊まっている間は息吹から絶対に離れずにいよう。
あの狡猾で主さまに心底惚れている絡新婦は何をするかわからない。
「…好きだ、息吹」
囁いて頬に口づけをした。
――まただ。
また遠くから声がする。
『鵜目姫…ここまでよく来てくれた。待っていたよ』
「あなたは誰?」
はじめて夢に出て来た時の声の主は荒々しい口調だったが、今回は違う。
とても優しくて、少しだけ主さまの声に似ている気がして、つい親しげに問うと、今まで声だけだった男が真っ暗闇からゆっくりと姿を現わした。
「え……、主さま…!?」
『違うよ」
「で、でも…」
――主さまはいつも冷静でいてあまり笑ったりすることはないが、目の前に立ったこの男は違った。
主さまは髪が長いが、この男は短い。
目元も優しくて、どちらかといえば雰囲気は晴明に似ている。
こんな優しそうな男が何故長い間封じられているのか…
息吹はそれが疑問で、ずっと上にある男の顔を見上げた。
「私は鵜目姫っていう方じゃないの。だからあなたが捜してる人とは違います」
『鬼八』
「え?」
『俺のことは鬼八と呼んでほしい。あなたは鵜目姫に違いない。顔立ちだって…雰囲気だって…瓜二つだ。鵜目姫、今度こそ離さないよ。今度こそ…』
急に右腕を強く掴まれて怖くなって身を引くと、また強く引き寄せられて鬼八の胸に倒れ込んでしまった。
「や…っ!」
『迎えに行くからね。俺と2人で今度こそ、ずっと一緒に生きよう』
「私は息吹なの!鬼八さ、離してっ!…主さま、主さまーっ!」
叫んだ途端、明るい光が暗闇を切り裂いて、鬼八が手を離して暗闇に消えて行った。
「息吹、大丈夫か」
「…主さま…」
…助けに来てくれた…
息吹は顔を覆って抱き着いた。

