屋敷の庭の外れにある蔵――
天叢雲は、その蔵の1番奥深くで眠っていた。
屋敷に戻ったと思ったら蔵へ入り、内側から鍵を閉めて、横長の桐の箱を開け、禍々しい妖気を発している天叢雲に呼びかけた。
「久方ぶりだが、お前を使わせてもらうぞ」
『邪念なくば我を手に取れ。邪念ある場合、お前を取り込み、吸収してやる』
天叢雲は低い声で人の言葉を操り、くつくつと笑った。
主さまは何の迷いもなく天叢雲を手にして、まだ鞘に収まったままの鍔のない白き剣を水平に構え、天叢雲の選定を待った。
『…これは邪念ではないと申すか?』
「恋慕が邪念だと言うのか?お前の好きなようにしろ、ただし俺の目的を遂げてからだ」
天叢雲はまたおかしそうに笑うと鞘と同じように白き光を放ち、主さまが瞳を細めると光を収めた。
『お前は相変わらず純粋だな。よかろう、お前に力を貸してやる』
「助かる。結界を切ってくれればそれでいい」
『そう言うな。何百年ぶりに目覚めたというのに少しは自在に操ってみせろ』
――天叢雲。
八俣遠呂智(やまたのおろち)の尾の中にあったとされ、主さまの家系に代々受け継がれてきた妖刀だ。
ただし、底知れぬ力を秘めており、長きに渡って使用すれば気が触れて自滅するとも言われており、今まで数度しか天叢雲を使用したことはなかった。
『女を助けに行くのか?我を使おうと思う位なのだ、さぞかし美しい女なのだろうな』
「見てみればわかる。夜になったら御所へと向かう。その力、借り受けるぞ」
天叢雲を手に蔵を出ると、妖気の噴き出る刀に山姫たちが近寄れず、主さまは1度寝室に持って行って障子を閉めると縁側に座って百鬼の招集を頼んだ。
「皆を集めろ。名のある妖は全員だ。息吹が晴明を人質に取られて、交換条件で帝の中宮にさせられようとしている。…皆で助けに行くぞ」
「い、息吹が!?あの子またそんなことを…!」
「救った後に好きなだけ怒ってやれ。とにかく俺は…もう限界だ。今回は人を殺めることを許す。ただし向かってきた者だけを斬れと伝えろ」
「はい!」
直ちに山姫が動き出した。
夜まであと少し――
天叢雲は、その蔵の1番奥深くで眠っていた。
屋敷に戻ったと思ったら蔵へ入り、内側から鍵を閉めて、横長の桐の箱を開け、禍々しい妖気を発している天叢雲に呼びかけた。
「久方ぶりだが、お前を使わせてもらうぞ」
『邪念なくば我を手に取れ。邪念ある場合、お前を取り込み、吸収してやる』
天叢雲は低い声で人の言葉を操り、くつくつと笑った。
主さまは何の迷いもなく天叢雲を手にして、まだ鞘に収まったままの鍔のない白き剣を水平に構え、天叢雲の選定を待った。
『…これは邪念ではないと申すか?』
「恋慕が邪念だと言うのか?お前の好きなようにしろ、ただし俺の目的を遂げてからだ」
天叢雲はまたおかしそうに笑うと鞘と同じように白き光を放ち、主さまが瞳を細めると光を収めた。
『お前は相変わらず純粋だな。よかろう、お前に力を貸してやる』
「助かる。結界を切ってくれればそれでいい」
『そう言うな。何百年ぶりに目覚めたというのに少しは自在に操ってみせろ』
――天叢雲。
八俣遠呂智(やまたのおろち)の尾の中にあったとされ、主さまの家系に代々受け継がれてきた妖刀だ。
ただし、底知れぬ力を秘めており、長きに渡って使用すれば気が触れて自滅するとも言われており、今まで数度しか天叢雲を使用したことはなかった。
『女を助けに行くのか?我を使おうと思う位なのだ、さぞかし美しい女なのだろうな』
「見てみればわかる。夜になったら御所へと向かう。その力、借り受けるぞ」
天叢雲を手に蔵を出ると、妖気の噴き出る刀に山姫たちが近寄れず、主さまは1度寝室に持って行って障子を閉めると縁側に座って百鬼の招集を頼んだ。
「皆を集めろ。名のある妖は全員だ。息吹が晴明を人質に取られて、交換条件で帝の中宮にさせられようとしている。…皆で助けに行くぞ」
「い、息吹が!?あの子またそんなことを…!」
「救った後に好きなだけ怒ってやれ。とにかく俺は…もう限界だ。今回は人を殺めることを許す。ただし向かってきた者だけを斬れと伝えろ」
「はい!」
直ちに山姫が動き出した。
夜まであと少し――

