結界は分厚く、触れると雷に打たれたかのように身体が痺れる感触は主さまを激怒させた。
そして透明な結界の奥で帝に手を掴まれてこちらを睨みつけている2人を見つけて、低い怨嗟の声を発した。
「…息吹に触れるな」
「日中こうして追いかけてくるほど息吹姫が愛しいか?その結界は晴明の結界の上に大阿闍梨が三日三晩眠らずに完成させたものだ」
その帝の言葉が耳障りだと言わんばかりに主さまが何度も結界に向けて力を放ち、刀で切りつけるが、びくともしない。
そうしているうちに近衛兵らが集結して矢を放ってきたが当たるわけもなくただ無心に穴を開けようとしていると、か細い声が耳に届いた。
「主さま、やめて!」
息吹は帝の手を振り払って庭園に飛び出すと、その場に座り込んで声を振り絞り、必死に叫んだ。
「私は自分で決めてここへ来たの!私は大丈夫だから、父様をお願いします!私は…帝の…中宮に、なります…」
最後は消え入るような声だったが、主さまには聴こえていた。
…自分でここへ来た?晴明を守るために?
中宮になることを引き換えに、無理矢理?
「…貴様…俺を本気で怒らせたな…」
「…っ、結界は破れぬ!お前は指をくわえて物欲しそうな顔で息吹姫と私を見ているしかできぬのだ。人と妖が交わろうとするなど滑稽だぞ、去れ!」
息吹が顔を覆って泣き崩れた。
駆け寄ってやりたくて、背中を撫でてやりたいのに、結界に阻まれて距離を縮めることができない。
「…息吹、待ってろ」
「お願い、危ないことはしないで…」
――それも聴こえた。
が、言うことを聞くつもりはない。
主さまは刀を収め、結界から離れるとそのまま身を翻してその場から去った。
日中はいつもの半分以下の力しか出せない。
それに結界は分厚く、あれを切り裂くには…とあるものが必要だった。
「夜まで耐えろ。帝に指1本触れさせるな」
――今回は本気で行く。人を殺めても構わない。
百鬼夜行の姫を…
俺のものを奪おうとする報いを受けてもらう。
「天叢雲(あめのむらくも)…出番がやって来たぞ」
屋敷に眠る、最強の剣。
そして透明な結界の奥で帝に手を掴まれてこちらを睨みつけている2人を見つけて、低い怨嗟の声を発した。
「…息吹に触れるな」
「日中こうして追いかけてくるほど息吹姫が愛しいか?その結界は晴明の結界の上に大阿闍梨が三日三晩眠らずに完成させたものだ」
その帝の言葉が耳障りだと言わんばかりに主さまが何度も結界に向けて力を放ち、刀で切りつけるが、びくともしない。
そうしているうちに近衛兵らが集結して矢を放ってきたが当たるわけもなくただ無心に穴を開けようとしていると、か細い声が耳に届いた。
「主さま、やめて!」
息吹は帝の手を振り払って庭園に飛び出すと、その場に座り込んで声を振り絞り、必死に叫んだ。
「私は自分で決めてここへ来たの!私は大丈夫だから、父様をお願いします!私は…帝の…中宮に、なります…」
最後は消え入るような声だったが、主さまには聴こえていた。
…自分でここへ来た?晴明を守るために?
中宮になることを引き換えに、無理矢理?
「…貴様…俺を本気で怒らせたな…」
「…っ、結界は破れぬ!お前は指をくわえて物欲しそうな顔で息吹姫と私を見ているしかできぬのだ。人と妖が交わろうとするなど滑稽だぞ、去れ!」
息吹が顔を覆って泣き崩れた。
駆け寄ってやりたくて、背中を撫でてやりたいのに、結界に阻まれて距離を縮めることができない。
「…息吹、待ってろ」
「お願い、危ないことはしないで…」
――それも聴こえた。
が、言うことを聞くつもりはない。
主さまは刀を収め、結界から離れるとそのまま身を翻してその場から去った。
日中はいつもの半分以下の力しか出せない。
それに結界は分厚く、あれを切り裂くには…とあるものが必要だった。
「夜まで耐えろ。帝に指1本触れさせるな」
――今回は本気で行く。人を殺めても構わない。
百鬼夜行の姫を…
俺のものを奪おうとする報いを受けてもらう。
「天叢雲(あめのむらくも)…出番がやって来たぞ」
屋敷に眠る、最強の剣。

