「あの馬鹿、どこに行った…!?」
空を駆け、主さまが最初に向かったのは晴明の屋敷だった。
結界は働いていたが弱々しく、押し入ると晴明の私室は荒れていた。
「また…あの男か…」
――息吹を執拗に欲しがる一条帝。
どれほど脅しても効果が無かったということか。
「晴明よ、お前の母の仇を取るまでもない」
やわらかな息吹の唇の感触が忘れられない。
…あんなにたおやかでおしとやかに見えるのに、どうしてすぐに飛び出して行ってしまうのか…。
思い返せば小さな頃もお転婆で、庭で転んではいつも擦り傷を作っていた。
「今行く。息吹、それまで帝には近付くな!」
主さまの瞳が金色に輝いた。
――その頃息吹は苦しそうに息を吐く晴明をどうしてやることもできずに膝枕をしてずっと身体を擦ってやっていた。
「父様、寒いですか?私の着物を…」
「私なら大丈夫だ。体力がないのは確かだが、すぐに良くなるよ」
心配させまいと弱々しく微笑んだ父代わりの男は、6年間ずっと慈しんで、教養を施してくれた大切な人。
…主さまのことも同じくらいに大切。
だが頼るわけにはいかない。
これは自分が原因なのだから、自分が帝の言うことを聞けば丸く収まるはずなのだ。
「父様?」
また眠ってしまうと息吹はずっと見張っている門番に声をかけた。
「帝を呼んで下さい。お話があります」
とにかくここから晴明を出してやらなくては。
しばらくすると…笑顔の帝がやって来た。
無性に腹立たしかったがぐっと耐えて、膝の上の晴明に視線を落とした。
「息吹姫、考え直してくれたか?」
「…父様をここから出して下さい。この方は無害です。私はあなた様の言うことを聞きます。だから父様を…」
「言うことを聞く、とはつまり…私の中宮になっても良い、と?」
――ほら、やっぱりその話だった。
息吹は苦笑して頷き、晴明の頬を撫でた。
「父様は解放して下さいますか?」
「もちろんだとも。見張りはつけるがそれで良いか?」
「…はい」
恩返しをする日が来た。
空を駆け、主さまが最初に向かったのは晴明の屋敷だった。
結界は働いていたが弱々しく、押し入ると晴明の私室は荒れていた。
「また…あの男か…」
――息吹を執拗に欲しがる一条帝。
どれほど脅しても効果が無かったということか。
「晴明よ、お前の母の仇を取るまでもない」
やわらかな息吹の唇の感触が忘れられない。
…あんなにたおやかでおしとやかに見えるのに、どうしてすぐに飛び出して行ってしまうのか…。
思い返せば小さな頃もお転婆で、庭で転んではいつも擦り傷を作っていた。
「今行く。息吹、それまで帝には近付くな!」
主さまの瞳が金色に輝いた。
――その頃息吹は苦しそうに息を吐く晴明をどうしてやることもできずに膝枕をしてずっと身体を擦ってやっていた。
「父様、寒いですか?私の着物を…」
「私なら大丈夫だ。体力がないのは確かだが、すぐに良くなるよ」
心配させまいと弱々しく微笑んだ父代わりの男は、6年間ずっと慈しんで、教養を施してくれた大切な人。
…主さまのことも同じくらいに大切。
だが頼るわけにはいかない。
これは自分が原因なのだから、自分が帝の言うことを聞けば丸く収まるはずなのだ。
「父様?」
また眠ってしまうと息吹はずっと見張っている門番に声をかけた。
「帝を呼んで下さい。お話があります」
とにかくここから晴明を出してやらなくては。
しばらくすると…笑顔の帝がやって来た。
無性に腹立たしかったがぐっと耐えて、膝の上の晴明に視線を落とした。
「息吹姫、考え直してくれたか?」
「…父様をここから出して下さい。この方は無害です。私はあなた様の言うことを聞きます。だから父様を…」
「言うことを聞く、とはつまり…私の中宮になっても良い、と?」
――ほら、やっぱりその話だった。
息吹は苦笑して頷き、晴明の頬を撫でた。
「父様は解放して下さいますか?」
「もちろんだとも。見張りはつけるがそれで良いか?」
「…はい」
恩返しをする日が来た。

