主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】

息吹が息を切らして幽玄橋の赤鬼と青鬼の前に現れた。

2匹はいつものように息吹と視線を合わせるためにしゃがむと顔を覗き込んだ。


「赤、青、ごめんね、ここ、通るから!」


「あ、おい!?」


なりふり構っていられない。


晴明が捕えられた。


…きっと自分のせいだ。

帝に対して失礼な態度を取って、怒らせたからに違いない。


長い幽玄橋を渡りきると、そこには無人の牛車が。

誰のものかはもうわかっている。

息吹が牛車に乗り込むと御所に向けてものすごい勢いで走り出し、平安町の人々は恐れをなして道の脇に避けると牛車を見送った。


――そして御所へ着き、文を握りしめて門番に詰め寄った。


「帝を!父様をお迎えに参りました!」


「息吹姫ですね?どうぞ中へ」


話はすでに通っていて、唇を噛み締めながら廊下を歩いた。

途中何事かと部屋から顔を出す女御や女房たちを精一杯睨みつけて、そして、目下目指す場所へとたどり着いた。


「息吹姫…やっと会えた」


「…父様を…晴明様を。お会いするまで何も話しません」


突っぱねて入り口で正座し、内侍に咎められたがそれも無視して、帝の優しげな顔をきっと見つめた。


…まさかこんなことをするなんて。


「強情な姫だ。内侍、退室を」


眉を潜める内侍を無理矢理退室させ、帝が御簾の中から出てきて膝の上で握りしめられている文を見た。


「こんなことは私もしたくなかった。だが息吹姫、私は本当にそなたを…」


「父様を。父様はどこに?」


その頑なさに帝はぱちんと扇子を鳴らし、息吹の手を握った。


「会えば私と話をしてくれるか?」


「…はい」


「ではこちらへ。私が案内してやろう」


帝自らが息吹の手を引いて部屋を出ると長い廊下を歩き、

その有り得ない光景にまた女御や女房たちが騒いだが、息吹はもうそれどころではない。


…覚悟ならしてきたはず。

晴明への恩は、いつか返そうと思っていた。


「牢!?」


「妙な術を使うので封じさせてもらった」


結界に閉ざされた牢の中に晴明は居た。