息吹が主さまの屋敷に戻った時…晴明の姿はなく、牛車もなかった。
「?父様は?」
「…ちょっとこっちに来い」
どこか憮然とした表情で縁側に座っていた主さまが目線も合わせずそう言い、息吹は風呂敷を抱えたまま主さまの隣に座った。
「どうしたの?」
「…お前をしばらくここで預かることになった」
「…えっ?どう、して…?」
「何か用があるらしい。…しばらくの間だ、我慢しろ」
――互いに様々な思いが駆け巡った。
息吹は主さまの屋敷に数日滞在できることが嬉しかった半面、晴明が何をしようとしているのか心配だったし、主さまは息吹を預かったことで…自分を抑えられなくなるのではないかと自分自身に不安を抱き…
以前夢で見た艶めかしい息吹を思い出してしまってぶんぶんと首を振ると、息吹から少し離れたところに座り直して煙管を噛んだ。
「…父様は何をするのかな…。1人でも大丈夫かな…」
「あいつも男だ。お前が居てはできないこともある」
「それってなに?」
「…女とか」
――息吹は晴明のことが好きだ。
…主さまはまだそんな誤解をし続けていて、息吹が悲しい想いをするかもしれないと思いつつも反応を見てみたくて横目で息吹を盗み見ると…
何故か満面の笑顔。
「そうなの?父様は好きな方が居るの?わあ、知らなかった!お会いしてみたいな」
顔を赤くして膝に置いた風呂敷を指で突きまくっている息吹の髪がさらりと肩から零れて、
その髪に触れたいという思いが噴き出して、ぎゅっと瞳を閉じて顔を逸らした。
「そういうことだ。あまり邪推をするな」
「う、うん。主さま、しばらくご厄介になります」
深々と頭を下げた。
ふわっと良い香りがして、息吹の顔を見れずに顔を逸らし続けていると、晴明が帰り際残して行った言葉を思い出した。
『十六夜、知っているか?この時代、男は女の家へ夜這いをしに行って想いを叶えるのが常識だ。…いやいや、そなたに限ってそれはないか。失敬失敬』
…唆されたのか?釘を刺されたのか?
晴明のやることはいつも胡散臭く、主さまを悩ませた。
「?父様は?」
「…ちょっとこっちに来い」
どこか憮然とした表情で縁側に座っていた主さまが目線も合わせずそう言い、息吹は風呂敷を抱えたまま主さまの隣に座った。
「どうしたの?」
「…お前をしばらくここで預かることになった」
「…えっ?どう、して…?」
「何か用があるらしい。…しばらくの間だ、我慢しろ」
――互いに様々な思いが駆け巡った。
息吹は主さまの屋敷に数日滞在できることが嬉しかった半面、晴明が何をしようとしているのか心配だったし、主さまは息吹を預かったことで…自分を抑えられなくなるのではないかと自分自身に不安を抱き…
以前夢で見た艶めかしい息吹を思い出してしまってぶんぶんと首を振ると、息吹から少し離れたところに座り直して煙管を噛んだ。
「…父様は何をするのかな…。1人でも大丈夫かな…」
「あいつも男だ。お前が居てはできないこともある」
「それってなに?」
「…女とか」
――息吹は晴明のことが好きだ。
…主さまはまだそんな誤解をし続けていて、息吹が悲しい想いをするかもしれないと思いつつも反応を見てみたくて横目で息吹を盗み見ると…
何故か満面の笑顔。
「そうなの?父様は好きな方が居るの?わあ、知らなかった!お会いしてみたいな」
顔を赤くして膝に置いた風呂敷を指で突きまくっている息吹の髪がさらりと肩から零れて、
その髪に触れたいという思いが噴き出して、ぎゅっと瞳を閉じて顔を逸らした。
「そういうことだ。あまり邪推をするな」
「う、うん。主さま、しばらくご厄介になります」
深々と頭を下げた。
ふわっと良い香りがして、息吹の顔を見れずに顔を逸らし続けていると、晴明が帰り際残して行った言葉を思い出した。
『十六夜、知っているか?この時代、男は女の家へ夜這いをしに行って想いを叶えるのが常識だ。…いやいや、そなたに限ってそれはないか。失敬失敬』
…唆されたのか?釘を刺されたのか?
晴明のやることはいつも胡散臭く、主さまを悩ませた。

