紅のように唇にひかれた息吹の血は甘く、背を向けて出て行こうとした息吹の腕を掴んだ。
「いた…っ、主さま…?」
「どういうつもりだ」
「え?何が?」
「俺に食われてもいいのか?何故戻って来た?ここにはお前にとって良いものなど何ひとつない」
締め切られた部屋の中、主さまがとても苦しそうな表情をしていていた。
息吹はそんな主さまの姿にきゅんとして、感じたことのない想いに顔を赤くして、主さまは…
“女”のような表情を見せた息吹に掴んだ腕が急に熱くなって、手を振り払った。
「…よく考えろ。晴明のことは俺がどうにかしてやる」
「…うん」
――主さまに掴まれた手首は赤くなって、それでも恐怖は感じずただ見つめ合っていると…
「十六夜、居るか?息吹はここへ来てはいまいか?」
「っ、父様…っ」
「…」
主さまが息吹の横を通り過ぎて障子を開けると、扇子で肩を叩いていた晴明が庭先で目を丸くしていた。
「おや?2人きりで一体何を?」
「い、いえ、何もしてませんっ!父様、母様とお買い物に行ってきます。後は1人で帰れるからっ」
「いやいや一緒に帰ろう。十六夜に少し用があるからちょうどいい。買い物が済んだら戻って来なさい」
「…はい」
息吹が赤くなった顔を隠すように俯いて山姫を捜しにその場から居なくなると、まだ息吹の血が唇についたままの主さまがふてくされたように寝転び、押し殺した声を発した。
「…何の用だ」
「わかっているだろうに。私の計画を息吹から聞いたのだろう?」
――のそりと部屋に上り込むと主さまの傍らに座り、2人はしばらく黙ったままだった。
晴明は主さまの唇についた血をじっと見つめ、親指できゅっとそれを拭うと顔を近付けて息を吹きかけ、主さまから睨まれた。
「やましいことをしたな?息吹の腕についた手の跡を見たぞ。襲いそうになったか?」
「…抜かせ。人間の女など誰が襲うか」
「ほう、息吹は要らぬと言うか。ではやはり息吹は道長の元に…」
「ふざけるな、絶対許さないぞ」
父代わりの2人は共に大きなため息をついた。
「いた…っ、主さま…?」
「どういうつもりだ」
「え?何が?」
「俺に食われてもいいのか?何故戻って来た?ここにはお前にとって良いものなど何ひとつない」
締め切られた部屋の中、主さまがとても苦しそうな表情をしていていた。
息吹はそんな主さまの姿にきゅんとして、感じたことのない想いに顔を赤くして、主さまは…
“女”のような表情を見せた息吹に掴んだ腕が急に熱くなって、手を振り払った。
「…よく考えろ。晴明のことは俺がどうにかしてやる」
「…うん」
――主さまに掴まれた手首は赤くなって、それでも恐怖は感じずただ見つめ合っていると…
「十六夜、居るか?息吹はここへ来てはいまいか?」
「っ、父様…っ」
「…」
主さまが息吹の横を通り過ぎて障子を開けると、扇子で肩を叩いていた晴明が庭先で目を丸くしていた。
「おや?2人きりで一体何を?」
「い、いえ、何もしてませんっ!父様、母様とお買い物に行ってきます。後は1人で帰れるからっ」
「いやいや一緒に帰ろう。十六夜に少し用があるからちょうどいい。買い物が済んだら戻って来なさい」
「…はい」
息吹が赤くなった顔を隠すように俯いて山姫を捜しにその場から居なくなると、まだ息吹の血が唇についたままの主さまがふてくされたように寝転び、押し殺した声を発した。
「…何の用だ」
「わかっているだろうに。私の計画を息吹から聞いたのだろう?」
――のそりと部屋に上り込むと主さまの傍らに座り、2人はしばらく黙ったままだった。
晴明は主さまの唇についた血をじっと見つめ、親指できゅっとそれを拭うと顔を近付けて息を吹きかけ、主さまから睨まれた。
「やましいことをしたな?息吹の腕についた手の跡を見たぞ。襲いそうになったか?」
「…抜かせ。人間の女など誰が襲うか」
「ほう、息吹は要らぬと言うか。ではやはり息吹は道長の元に…」
「ふざけるな、絶対許さないぞ」
父代わりの2人は共に大きなため息をついた。

