主さまが縁側に座って煙管を吹かしていると、湯上りの息吹が隣にちょこんと座って手で風を扇いでいた。
「暑い…。雪ちゃん、ふうふうしてほしいな」
「お、おう、ちょっと待ってろ」
主さまから離れたところに座っていた雪男が横目で睨んできている主さまを怖がりつつも息吹の傍に座って息を吹きかけると、冷たい風が吹いて一気に汗が引いた。
「涼しい!」
「あんま風に当たりすぎると凍っちまうかもだから俺が団扇で扇いでやる」
雪男が団扇を手にして風を作ってやり、またもやそんな光景を見せつけられていらいらの頂点に達した主さまからじわりと妖気が滲み出た。
突き刺さるような殺気に鳥肌が立った雪男が無理矢理息吹に団扇を手渡すと、そそくさと地下の自室に引きこもってしまった。
息吹はきょとんとしながら団扇を手にして、隣で何食わぬ顔をして庭を眺めている主さまに向かって団扇を扇ぐと…
「…別に暑くない」
「そう?ねえ主さま、お話しようよ」
「…」
「どうして十六夜さんになって私の傍に居てくれたの?」
――じっと見つめて来る息吹の視線に一気に変な汗が噴き出た主さまは、手でしっしと息吹を追い払う仕草をして背を向けた。
「答えたくない。…もう帰れ」
「やだ。ねえ主さま、眠たくなってきちゃったからお部屋借りるね」
「…は?ちょ、いぶ…」
さっさと寝室に入って行ってしまい、絶対誰も入ることのない聖域ともいうべき部屋に籠城されてしまった。
しばらく様子を窺っていたのだが…そっと中へ入ると…本当に寝ていた。
「…息吹」
呼びかけても完全に寝入っていて返事がない。
山姫から借りた浅葱色の浴衣の胸元が少し乱れていて、傍らに座るとそれを正してやり、恐る恐る…白い頬に触れた。
「…誰も好きになったりするな。お前は…俺の…」
長い睫毛…
1度だけ重ねた唇は少し開いていて誘っているように見えて親指で唇をなぞり、自分の口元に運んで、なぞった。
間接的な口づけを交わし、部屋を出て、井戸水で顔を洗った。
「…俺は何を言うつもりだったんだ…」
おかしくなる。
「暑い…。雪ちゃん、ふうふうしてほしいな」
「お、おう、ちょっと待ってろ」
主さまから離れたところに座っていた雪男が横目で睨んできている主さまを怖がりつつも息吹の傍に座って息を吹きかけると、冷たい風が吹いて一気に汗が引いた。
「涼しい!」
「あんま風に当たりすぎると凍っちまうかもだから俺が団扇で扇いでやる」
雪男が団扇を手にして風を作ってやり、またもやそんな光景を見せつけられていらいらの頂点に達した主さまからじわりと妖気が滲み出た。
突き刺さるような殺気に鳥肌が立った雪男が無理矢理息吹に団扇を手渡すと、そそくさと地下の自室に引きこもってしまった。
息吹はきょとんとしながら団扇を手にして、隣で何食わぬ顔をして庭を眺めている主さまに向かって団扇を扇ぐと…
「…別に暑くない」
「そう?ねえ主さま、お話しようよ」
「…」
「どうして十六夜さんになって私の傍に居てくれたの?」
――じっと見つめて来る息吹の視線に一気に変な汗が噴き出た主さまは、手でしっしと息吹を追い払う仕草をして背を向けた。
「答えたくない。…もう帰れ」
「やだ。ねえ主さま、眠たくなってきちゃったからお部屋借りるね」
「…は?ちょ、いぶ…」
さっさと寝室に入って行ってしまい、絶対誰も入ることのない聖域ともいうべき部屋に籠城されてしまった。
しばらく様子を窺っていたのだが…そっと中へ入ると…本当に寝ていた。
「…息吹」
呼びかけても完全に寝入っていて返事がない。
山姫から借りた浅葱色の浴衣の胸元が少し乱れていて、傍らに座るとそれを正してやり、恐る恐る…白い頬に触れた。
「…誰も好きになったりするな。お前は…俺の…」
長い睫毛…
1度だけ重ねた唇は少し開いていて誘っているように見えて親指で唇をなぞり、自分の口元に運んで、なぞった。
間接的な口づけを交わし、部屋を出て、井戸水で顔を洗った。
「…俺は何を言うつもりだったんだ…」
おかしくなる。

