主さまは押し付けられた桃色の金平糖をじっと見つめていた。
ぽりぽりと音がして、顔を上げると…
息吹は満面の笑顔で美味しそうに金平糖を頬張っていて、目が合うと、にこっと笑いかけてきて膝を叩いてきた。
「…俺に触るな」
「ひとつ食べてみて?それとも主さまは甘いものが苦手だった?そんなことないよね?お団子とか食べてたもんね」
――よくそんな些細なことを覚えていたな、と半ば感心しながら仕方なく金平糖を口に運んで噛み砕くと、一気に甘い味が口腔に広がって、顔をしかめるとまた笑って部屋を出て行った。
「…一体何をしたいんだ…?」
――寝室を出ると山姫が小さかった頃いつもしていたように手を握ると嬉しそうにしてくれて、2人で縁側に座ると山姫が声を潜めて主さまをからかった。
「照れてただろ?さっきまでこの辺をうろうろしててあんたを待ってたんだよ」
「え、そうなの?でも…全然お話してくれなかったし…」
しゅんとなってうなだれると、山姫は金平糖を口に運びながら息吹の艶やかな髪を撫でて瞳を細めた。
「直に慣れてくるさ。主さまも大きくなったあんたを見て動揺してるんだ」
「うん…」
そうしているうちに2人の会話が気になったのか主さまが寝室から出てきて縁側のほど近い位置に座り、煙管を噛んだ。
…決してこちらを見ようとはしない。
気まずい、とは感じなかったが、十六夜が主さまであることを知った息吹は山姫の助言を受け入れて主さまを見て見ぬふりをしてどこかへ消えた雪男を捜そうと思って立ち上がると…
「…どこへ行く」
「雪ちゃんのところ。遊んでもらうの。貝合わせの道具を持ってきたからそれで…」
「………その前に花に水は遣らなくていいのか?」
そう言われてはじめて庭をよく観察した息吹は、色とりどりに咲き乱れる花々を見て顔を綻ばせた。
「わあ、綺麗に咲いてる…!母様が私の代わりに?」
「そうだよ。あんたが帰ってきた時に喜んでもらおうと思って朝っぱらからせっせと世話をしたのさ。ああ、暑い暑い…」
――主さまの屋敷に笑い声が響き渡る。
主さまの口元にも笑みが浮かんでいた。
ぽりぽりと音がして、顔を上げると…
息吹は満面の笑顔で美味しそうに金平糖を頬張っていて、目が合うと、にこっと笑いかけてきて膝を叩いてきた。
「…俺に触るな」
「ひとつ食べてみて?それとも主さまは甘いものが苦手だった?そんなことないよね?お団子とか食べてたもんね」
――よくそんな些細なことを覚えていたな、と半ば感心しながら仕方なく金平糖を口に運んで噛み砕くと、一気に甘い味が口腔に広がって、顔をしかめるとまた笑って部屋を出て行った。
「…一体何をしたいんだ…?」
――寝室を出ると山姫が小さかった頃いつもしていたように手を握ると嬉しそうにしてくれて、2人で縁側に座ると山姫が声を潜めて主さまをからかった。
「照れてただろ?さっきまでこの辺をうろうろしててあんたを待ってたんだよ」
「え、そうなの?でも…全然お話してくれなかったし…」
しゅんとなってうなだれると、山姫は金平糖を口に運びながら息吹の艶やかな髪を撫でて瞳を細めた。
「直に慣れてくるさ。主さまも大きくなったあんたを見て動揺してるんだ」
「うん…」
そうしているうちに2人の会話が気になったのか主さまが寝室から出てきて縁側のほど近い位置に座り、煙管を噛んだ。
…決してこちらを見ようとはしない。
気まずい、とは感じなかったが、十六夜が主さまであることを知った息吹は山姫の助言を受け入れて主さまを見て見ぬふりをしてどこかへ消えた雪男を捜そうと思って立ち上がると…
「…どこへ行く」
「雪ちゃんのところ。遊んでもらうの。貝合わせの道具を持ってきたからそれで…」
「………その前に花に水は遣らなくていいのか?」
そう言われてはじめて庭をよく観察した息吹は、色とりどりに咲き乱れる花々を見て顔を綻ばせた。
「わあ、綺麗に咲いてる…!母様が私の代わりに?」
「そうだよ。あんたが帰ってきた時に喜んでもらおうと思って朝っぱらからせっせと世話をしたのさ。ああ、暑い暑い…」
――主さまの屋敷に笑い声が響き渡る。
主さまの口元にも笑みが浮かんでいた。

