…まさか息吹が御所に居るとは思っていなかった。
帝を脅かして一泡吹かせてやろうとした矢先に、息吹の声が…背中を叩いた。
あの時の息吹の顔――怯えきって、唇を震わせて…
そんな顔で見つめられたことに動揺していると、震える声で止めを刺された。
“十六夜さんは…主さまだったの?”と。
――正体を隠して傍に居ようと思ったから、罰が下ったんだ。
そう思うしかなく、逃げるようにここへ戻って来たのに…
「どうして…お前からここに来るんだ…!?」
手で口を押えながら吐き出すと、庭で歓声が沸いた。
「息吹!息吹なんだろ!?母様を覚えているかい!?」
「母様…!会いたかった…!母様!」
…息吹の泣き声が聴こえる。
「こんなところまで来て…一体なんのつもりだ…!?」
主さまは自室から出なかった。
襖を隔てた隣の部屋に山姫が息吹を連れ込み、2人で泣いている声が聴こえて、余計に苛立ちが募った主さまが耳を塞いでしまおうとした時――
「主さま…居るんでしょ?お願い、私と会って下さい。主さま!」
「…」
「怒ってるの?…怒ってるよね?私を許せないのは仕方ないと思ってるよ。でも主さま…私に会いに来てくれたじゃない!」
「!!」
――勢いよく襖が開き、逆光の中腕で目を庇うと、息吹が身体を震わせながら仁王立ちしていた。
「……息吹…」
「私、十六夜さんのことが大好きだったの。だから十六夜さんが主さまだって知って…すごく嬉しかったの。なのに主さま…どうして逃げたの?どうして!?」
灯りを燈していない暗闇の部屋に乱入してきた息吹が顔を真っ赤にして怒り、腕にしがみついてきた。
「俺に…触れるな」
「許してくれるまでずっと通うから!主さまが私を守ってくれたんだよね?ありがとう主さま!」
…少しはしおらしくなったかと思ったら…
6年前、毎日“主しゃま、遊んでー”と言って傍から離れなかったようにして腕に引っ付き…主さまは、声を振り絞った。
「…もうここには来るな。人の世界に戻れ」
「やだ!許してくれるまで通うから!」
…強情だった。
帝を脅かして一泡吹かせてやろうとした矢先に、息吹の声が…背中を叩いた。
あの時の息吹の顔――怯えきって、唇を震わせて…
そんな顔で見つめられたことに動揺していると、震える声で止めを刺された。
“十六夜さんは…主さまだったの?”と。
――正体を隠して傍に居ようと思ったから、罰が下ったんだ。
そう思うしかなく、逃げるようにここへ戻って来たのに…
「どうして…お前からここに来るんだ…!?」
手で口を押えながら吐き出すと、庭で歓声が沸いた。
「息吹!息吹なんだろ!?母様を覚えているかい!?」
「母様…!会いたかった…!母様!」
…息吹の泣き声が聴こえる。
「こんなところまで来て…一体なんのつもりだ…!?」
主さまは自室から出なかった。
襖を隔てた隣の部屋に山姫が息吹を連れ込み、2人で泣いている声が聴こえて、余計に苛立ちが募った主さまが耳を塞いでしまおうとした時――
「主さま…居るんでしょ?お願い、私と会って下さい。主さま!」
「…」
「怒ってるの?…怒ってるよね?私を許せないのは仕方ないと思ってるよ。でも主さま…私に会いに来てくれたじゃない!」
「!!」
――勢いよく襖が開き、逆光の中腕で目を庇うと、息吹が身体を震わせながら仁王立ちしていた。
「……息吹…」
「私、十六夜さんのことが大好きだったの。だから十六夜さんが主さまだって知って…すごく嬉しかったの。なのに主さま…どうして逃げたの?どうして!?」
灯りを燈していない暗闇の部屋に乱入してきた息吹が顔を真っ赤にして怒り、腕にしがみついてきた。
「俺に…触れるな」
「許してくれるまでずっと通うから!主さまが私を守ってくれたんだよね?ありがとう主さま!」
…少しはしおらしくなったかと思ったら…
6年前、毎日“主しゃま、遊んでー”と言って傍から離れなかったようにして腕に引っ付き…主さまは、声を振り絞った。
「…もうここには来るな。人の世界に戻れ」
「やだ!許してくれるまで通うから!」
…強情だった。

