気付いた時には朝日が昇り始めてた。


カーテンからのぞく空が、サーモンピンクが混じり始めて。


朝日が差し込む部屋。


夜には気付かなかったけど、疲れきったかのような霧生の顔。


まるで魂を抜かれたみたい。


大事な人を亡くす痛みに、ひたすら耐えていたのが分かる。


目を腫らして、悔しさで唇を噛みしめすぎて血が出ていた。


その血を優しく拭(ぬぐ)うと、霧生はニッコリと笑った。


「もう大丈夫だ。ありがとう。」


「大丈夫じゃないよ!!今日は1日一緒にいるよ。」


「仕事に行かなきゃ。子供達が待ってるから。」


「こんな時くらい病院休みなさい!!」


まるで母親のような口調。


「こんな時だから仕事するんだよ。色々と、考えなくてすむからさ。」


霧生がクスリと笑って、優しくあたしの頭をなでた。


「…霧生がそう言うなら…。」


渋々、納得した。


「チワワは、学校ちゃんと行くんだぞ。」


「大丈夫!!帰ってきたら、病院に顔を出しに行くね。」


「分った。待ってるよ。」


約束をすると、あたしは霧生の部屋を後にした。


何か心に渦巻いている不安はあったけど…。


霧生が消えてしまうのじゃないか?


だけど学校から帰ったら、病院で会う約束をしたから大丈夫。


そう自分に言い聞かせていた。