初めて会った日から、走馬灯のように頭の中で次々に思い出す。


懐かしくて、温かい思い出ばかり。


自然と涙がこぼれた。


霧生がいなくなった時、ずっとそばにいて笑わせてくれた。


真冬に裸足でワンピース一枚で脱走したこと。


あの時、初めて尚吾に対して恋愛感情が芽生えて。




----尚吾を失いたくない。



強く強く心の芯から思った。


ギュっと、膝の上で両手を握り締めて真っすぐに尚吾を見た。


「あたし、尚吾が大好きだよ。」


「あぁ、知ってる。だから泣くなよ。」


そう言って照れ笑いしてる。


だけどあたしは、真剣な顔をして目を逸らさない。


「だから、あたしは尚吾とは付き合えない。」


ハッキリ言った。


「…意味わかんねぇ。」


ビックリして固まってる。


「好きだから、選べないの。」


真剣な目からは、涙が止まらない。


好きだから失いたくなくて。


好きだから、幸せになって欲しくて。


いつかは、お兄ちゃんに見つかるかもしれない。


尚吾を守る為には、これしか方法がない。


本当は、離れたくなんかない。


ずっと、そばにいて欲しいのは尚吾なのに…。


それでも現実を考えれば、あたしと一緒にいたら不幸になるのは目に見えている。