何もかもがキラキラしていた。

そんな台詞似合わないとは知りつつも、それしか表現が思い浮かばないくらい眩しかった。彼女と出会ってからの、俺の日常は。


あの日は、幸の21回目の誕生日だった。3月の終わり。一緒に過ごすのは、これで二回目。

一度目は、幸が大学に受かって俺の下宿近くに越してきてすぐだった。


『…たいちゃん』


ドアを開けると照れ臭そうに下を向いて、幼い頃のままの俺の名を呼んだ彼女。…色づいた彼女の頬を、今でもはっきり覚えてる。

何年かぶりに会った"いとこ"は、もうすっかり大人の女性になっていた。





「たいちゃん!電気消して、電気!!」

貧乏学生の俺たちだから、コンビニで安っぽいケーキを買って。それで、何を思ったかアホみたいに律儀に20本の蝋燭を全て突き刺して。

その火を全部消すのに、幸は三回もの息を費やした。



─たいちゃん。

彼女だけの呼び方はあの時から何一つ変わっていなかったけれど、一つだけ変わったことがある。



「穴ぼこだらけのケーキやね」

そう言って一口頬張っては、嬉しそうに、幸せそうに笑って。俺も顔がほころんだけど、のっていたイチゴが酸っぱすぎて顔をしかめた。


「ふふ、たいちゃん変な顔〜」

「…うっさいアホ」

「アホゆう方がアホ〜っ!」



俺は幸が好きで、

幸は俺が好きだった。





一人暮らしの互いのアパートは、徒歩五分もない距離。

それでも俺たちは、必ずどちらかの家で過ごした。






俺たちは、「いとこ」の枠から抜け出ていた。


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