喫茶店を出て、家に帰る道を歩いていると、


「よぉー」

ひらひら手をふっているのは家にいるはずの和泉が道の端にいる。
いやいや、何でいるんだよ!?


「出てくの?あの家」

「それよりも、なんで、あんたここにいるのよ?」

その疑問に答えずに、ねぇ、と私の顔にぐんと近付ける。早くなる心臓の音、息がつまりそう。和泉の綺麗な深い色をした目から視線を逸らしたい、のに逸らせない。


「行くの?」

「いかないよ、だって、気にってるものがたくさんあるから、あんたも含めてだから…ハル」


視線を逸らさないように、ハルを睨んだ。
彼への気持ちをはっきりとしたモノに変えるのは、きっと今だ。宣戦布告の様に言いきった私にハルはいきなり笑い出す。


「は、ははははっ、…自惚れても良いの?」
「存分に自惚れれば?」


私がそう言うと、ハルはキスをした。勢いが強くて、ぶつかったみたいなキスだったけれど。
それは、ちゃんとした恋人としての初めてのキスだった。