母さんが死んで、一旦俺は父の実家に預けられていた。そこの人たちは表向きは優しいが、どこか冷たく、よそよそしかった。
最初はそんなものだろうと、気にしていなかったのだけど。

偶然、聞いてしまったんだ。その、事実を。

半分開きかけたドアから聞こえてきた声を聞かなければ、今、どうなっていたんだろう?


「やだわ、あの"女"の子がここにいるなんてね。兄さんも馬鹿よねぇ、騙されるなんて…ねぇ?」

「何が?由布?」

俺の叔母の声がする。自分の旦那しかいないと思ったのか、ぽろりと言ったのだ。


「今いるでしょう?春人くん…あの子はねぇ、血が全く繋がってないのよ、兄さんと」

「え?」


血が、繋がってない…。
頭を殴られたような衝撃って、こういう事をいうんだと思った。


「義姐さんの浮気の子だったらしいわ…本当は、だから、風当たり強いでしょ?しかも死んだ理由は表向きただの交通事故だけど、駆け落ちする途中に交通事故にあったのよ」


しかも長い間、連絡がなかったから、父さんカンカンで…、物好きなことに育てるっていうのよ?
バカな話よねー…。