そう思った瞬間、先輩と美優が、カフェから出てきた。

あたしに、気づいた二人は、固まっている。

まさか……居るなんて、思わないよね?

居ると思ってたら、イチャイチャなんかしないもんね?


「ま……まゆ…」


美優が、気まずそうにあたしの名前を呼ぶ。


「……美優」



「……ひっ…」


あたしの、低い、普段からは想像もつかない声に、
小さい悲鳴をあげる、美優。

「……先輩…」


「………」

先輩は、何にも言わない。

ただ、目を見開いてあたしを見てる。


「説明……してよ」

「……ま、真由、あのね…」


「説明しろよ!!!!!」


腹の底から、どなり声を出したあたし。

悲しみよりも、怒りの方が勝ってる。



「……ごめんっ」

先輩が、初めて口を開いた。



「俺、浮気した。美優と。本当にごめん!!」

「正也っっっ!!」


浮気を、告白した先輩を、親し気に下の名前で呼ぶ美優。

なに、それ。

なんで、下の名前で呼んでるの?

浮気って、どこまでいったの?

謝るなら、浮気しなければいい。


「別れましょう…先輩…」

「なっ……」

「別れましょう…貴方みたいな彼氏いらない」

「謝ってるだろっ!」


先輩が、あたしに逆切れしてきた。

なんで、あたしが、怒られなきゃいけないの?


「あたしは……そんなに……そんなに軽い女じゃないっ! なんで…なんでよ? 先輩、あたしの事好きっていいましたよね? 嘘だったんですか? 浮気…謝るなら、しなければいいじゃないっ! どうせ、あたしの事なんか、遊びだったんでしょう!? 本命は、美優で、遊びだったんでしょう? いいかげんにしてよ! あたしを、みくびらないでっ!!」