いや、正確には立ち去ろうとした。 でも、あたしの右手は、光康に掴まれていて。 「待って下さい」 あたしは、振り返らない。 「嫌です。離して下さい」 こんなところでも、他人のフリ。 「見ましたか??」 光康の真剣な声。 静かに、ゆっくりとあたしに問う。 「見ました」 ここで、あたしは、振り返る。 久しぶりに見る、光康の顔は、やっぱり整っていて。 眉間に皺を寄せて、苦しそうな顔をしていた。 抱きしめたい… そんな、衝動にかられながらも、 あたしは、ゆっくりと口を開く。