一瞬だった。

先輩が、あたしの手を引っ張った。

気づけば、あたしは、先輩の腕の中。

ビックリしすぎて、声が出ない。

「あ……あの、先輩……?」

「………」

先輩は、無言で、あたしを抱きしめている。

ど……どうしたら……。

「……あって……」



「はい…?」

先輩の声が、聞こえなくて、聞き返す。

先輩が、次に発した言葉に、あたしは、声を失った。


「好きだ……俺と付き合って…」



「え……」



あたし、今、告白されてるの?

人生初の告白?



「……嫌?」


嫌じゃない、逆に嬉しい。

でも、素直に喜べないのは、なんで?

「……あ、たし……」


どうしていいのか、わからない。

頭の中、ぐちゃぐちゃで。

先輩の顔を見ることが出来ない。

「……ちょっとでも、付き合ってもいいっていう気持ちはあるの?」

それも、わからない。

でも……でも……

あたしを、じっと見る先輩の真剣な目を見てると、
何にも言えなくなる。

「……はい…」


あぁ……言ってしまった。

「……うん、じゃ、付き合ってよ」

先輩がどれだけ、真剣なのかがわかる。

「はい……」

小さく頷いたあたしに、先輩は、ホッとしたようにため息をつく。

「じゃ、これからよろしくね」

微笑みながら、あたしの頭を撫でる先輩に何にもいえずに、
あたしは、俯く事しかできなかった。