愛してる?...たぶん。

「よくね、初恋は叶わない、って言うでしょ?でもね、それでも恋した気持ちは本物。恋したことに全然後悔はなかった…って言えば嘘になるけど、それでもあたし、センセに恋してよかったって思ってるよ。センセを好きになれてよかった、って」



「そっか」



彼女との出会い、いや、再会は本当に突然だった。



「卒業すれば忘れられる…って思ってた。いつの間にか思い出になるんだって。でも、ね、ふとした時に思い出すの。次次って思っても忘れられなかったの。で、そんな時、センセがお店に来て、彼女…あっ、結婚しちゃってたから奥さん、か。別れたって泣いてて…。忘れようとしてた気持ちがぶわぁーって溢れちゃって…あんなことしちゃった」



「そっか」



まだ血の滲む傷を無理矢理広げられ、上書きされ、昔の傷跡なんて跡形もなくなった。そして振り回させて、でもそれが嫌じゃなくて、なんだか心地よくて…いつの間にか僕の心の中には彼女がいた。



「でね、それでもなんだかスッキリしなくて、センセに好きって言ったはずなのに、なんだか違ってて、あたしにしては悩んで悩んで…ここに来ちゃったの」



「そっか」



会いに行きたかった。会いに行こうと思ってた。でも、“告白”なんてなんだか恥ずかしくて、“好き”なんて、照れ臭くて、結局、僕は彼女から逃げてた。



「すっごくバカみたいだけど、制服来て、学校来て、ここに来れば、あの時したかったこと、あの時言いたかったこと、あたしがここに残してきた“あの時のあたし”が救われる気がしたの」



「そっ、か」



いや、救われたのは僕だ。あの日も今も、僕は彼女の言葉に救われてる。出会いも別れも思い出も、そして悩みや後悔さえも宝物。恵梨との全ても宝物だと言われ、僕はなんだか泣きそうになった。