箱庭ラビリンス



そう思ったけれど、そんな考えは一瞬にして消した。今はそうじゃない。今は相手をどうにかしないといけない。この頭のおかしい異常者を。


「言っただろう?叫んじゃ駄目だって。嫌がるのも逆効果だって、分かっているだろう?」


分かってる。けれど、そんな余裕もあるわけない。従える筈もない。逃げ出したんだ。だから、だから。考えろ。考えるんだ。


「まだ話したい事、沢山あるんだ。行こうか」


どんなに抵抗しようとも、ズルズルと引きずられる。周りは見て見ぬ振り。もしかすると、先生は騒ぐ私に気づいてくれるかもしれない。けど遅い。


頼れるのは誰だ?頼ってはいけなかった?一人の私はなんて無力だ。頭がおかしくなってくる。


ギリリと手が締め付けられた。


「嫌、だ……痛い……」


手が痛い、左肩が痛い、体の節々が痛い。頭が真っ白になった。


「菜穂姉、叔母さん、母さん……助けて。ナナギくん……っ~~!桐谷くん!」


瞬間、手は切られた。