トボトボと伸びた影を追い、玄関から校門に向かう。
今思い浮かぶのは音楽室で、ピアノを弾いているであろう彼の姿で、自由自在に動く指で耳障りの良い音で。
「未来」
なのに聞こえたのは耳障りな声。重なったのは二つの影と影。見えたのは見たくもない姿。
「なん……で」
靴を擦りながら後退する。砂と靴が摩擦し合う。
来るな。嫌だ。
「やっぱり学校、ここだったんだな。制服からしてそうだと思った」
笑う。変わらない私を抑止する笑顔。詰めよって歩み寄って。
「や……っ」
逃げたいのにどうしても足が動かない。
助けて。誰か。
ポケットに手を入れても何も掴めない手のひら。救いを求める術を私は置いてきた。



