箱庭ラビリンス



しかし、彼がこうやって教室で話し掛けてくるのは珍しい。


用事や音楽室に居る時以外、互いに積極的に話し掛けるタイプでもないし、私が彼と話し彼がクラスの人達に何かを言われるのを好まないと言うのもある。


何だろうか。


やや不安になりながら前髪の隙間から彼を覗き見た。すると、困ったような不思議なそうな色々な感情が入り混じった表情を見せる。


「授業、とっくに終わってるけど……」


「えっ……!?」


繰り出された言葉に教室を見渡した。人だらけだと思っていた教室は既に少なくなっていて、窓の外では部活に勤しんでいる人だって居る。


「……」


驚いた。いつも少しの間教室に留まりこそすれ、鞄に何も詰めずにジッとしている事はなかった。


それを考えると彼は……。