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雑音だらけで、音が耳に張り付いているような気分だった。耳を塞いでも消えないのだ。
何度も何度も母さんの声が私に語り掛けてくる。昨日の言葉で。声で。止めろと、煩いと言っても消えない。
お願いだから消えて。消えてしまえ……――。
「望月さん」
ハッと意識が戻る。頭が混乱していた所に覚醒させるには十分の声が響く。雑音ではなかった綺麗な音。
「あ……」
顔を上げれば予想通りの姿であって、私は少し戸惑う。
彼に私の最も弱く、汚い部分を吐き出してしまったが為に、どんな顔をすればいいのか分からないのだ。
なのに彼はいつも通りの表情で、でもそれが私をホッとさせていたのも本当だ。



