箱庭ラビリンス



一気に無音になり、独りだけになる。


『女の癖に』


『愛想すらない』


『可愛くない』


複数の人間に混じってアイツが笑った。


『未来が……女が泣くと、どうもイラついてもっと泣かせてやりたくなるんだよな』


そして手が振りかざされて――……


「っ、事実は消えない。約束なんて意味ない。アンタは僕を助けてはくれない」


やけに冷静に言ったのに自分の声が聞こえない。ただ、怒りとも悲しみとも嫌悪とも取れるような絡み合う感情がそこにはあって。


「っ――!」


通話を一方的に切った後、力任せに携帯を壁目掛けて投げた。


ゴンッと鈍い音が聞こえ、また聞こえ、プラスチックが落ちたような軽い音と混ざりあった。


携帯がどうなろうと知った事ではなかった。私は椅子の上で膝を抱え、ゆっくりと耳を塞いだ。