箱庭ラビリンス



何処になんて分からない。けど走った。求めた。私が私で居れるはずだった居場所を。


そんなもの、何処にもない?


ある筈がない。崩壊したものは戻らないのだから。


「……すけて。……助けて」


全力で走ったからなのか朦朧とする意識で辿り着いていた場所は音楽室。


あの子は居ない。何処にも居ない。


助けを求めても、あの日から今まで何処にもいない。


「ナナギくん……っ!」


あの子だけが私の支えで。あの子との一時の記憶が節々で醜悪な記憶に塗り替えられても“居た”と言う事実は変わらなかった。微かな記憶は残っていた。


『君の力になれるなら。いくらでも弾くよ。どうすればいい?』


「音を……私に勇気が出る音を頂戴」


もがいても掴むのは空虚だけ。