箱庭ラビリンス




振り返ると誰かが入っていったようで制服の裾だけが映る。


「うわっ、と……桐谷くん、今から行くんだ?」


桐谷くん?桐谷音弥?


「そう。そっちはサボり?」


「そ、そうそう!何か怠くてさー」


主に話をしているのはお昼を食べようと言ってきた彼女。噛みながらも言葉を紡いでいる。


大方、男に『悪口を言っている女』と思われたくないのだろう。節々に取り繕うような傾向が伺える。


「桐谷くん昼休み教室にいなかったよね?あ、いつもいないか」


ペラペラと口を開きながらも動揺しているのが伝わってきた。


だが、彼は違う。


「うん。だって……人の事なかり指摘する女子が居る教室って居ずらいし」


それは駄目だろう。と内心で制すも言葉になる筈がない。


絶句したのか返答は遅かった。


「そ、れって」


「途中からだけど聞いてたよ。話のネタがどうとかって話」


私も絶句してしまった。


彼は居たのかと。気づかなかったと。