箱庭ラビリンス



ありがとう。それを聞いてグッと溢れてくる感情を抑えた。


「っ、」


ああ、いつも明るいから誤解していた。菜穂姉も菜穂姉で抱えてる事があったんだ。


ほら、また知らなかった事が知れた。


けれど、その事を悟ると同時に自分で手一杯の私に情けなくなった。


ありがとう。だなんて。此方のセリフだ。


ありがとうと何度言っても私はきっと言い足りないんだ。


「――……ありがとう」


でも言うんだ。言葉にしなくちゃ伝わらないから。


そう、私はまだ言ってない。