名に、目を惹かれた。唇から細い声が漏れた。
「り、つ……」
「っ、」
呟いた私の声に息を飲むのが聴こえた。
隣からだ。彼からだ。
動く音すら立てないように、恐る恐る彼を見ると、私と目が合うなり少し泣きそうにしながらも笑った。
何でそんな風に……。と思ったと同時に彼らしからぬ声で告げた。
弱々しい、苦しげな声。
「……律は俺の一個上の、兄ちゃん。だった」
“だった”過去形だった。だから、口を閉ざして追求などしなかった。出来はしないだろう。
彼の表情からは、彼の思いが計り知れなかった。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…