名に、目を惹かれた。唇から細い声が漏れた。


「り、つ……」


「っ、」


呟いた私の声に息を飲むのが聴こえた。


隣からだ。彼からだ。


動く音すら立てないように、恐る恐る彼を見ると、私と目が合うなり少し泣きそうにしながらも笑った。


何でそんな風に……。と思ったと同時に彼らしからぬ声で告げた。


弱々しい、苦しげな声。


「……律は俺の一個上の、兄ちゃん。だった」


“だった”過去形だった。だから、口を閉ざして追求などしなかった。出来はしないだろう。


彼の表情からは、彼の思いが計り知れなかった。