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泣いた。また泣いてしまった。彼の前で私は何回泣けば気が済むんだろうか。
「……ごめんなさい」
「いいよ。それよりも、落ち着いた?」
「うん……」
一向に泣き止まない為に、彼は私を連れ食卓から別の一室にと移動していた。
冷やしたタオルを目に当てつつも部屋を見渡すと、真っ先に賞状やら楯やらが目に入った。
何気無しにそれらに目を通していく。
『桐谷色葉』『桐谷絵美』『桐谷音弥』
彼と彼女達の名前がいくつも。すごい家族だ。私は生まれてから賞状など貰った記憶が殆んどないのに、それが一杯となると感嘆せずにはいられない。
「……?」
そこにふと、止まる一つの名前。知らない名前。
『桐谷律』



